弊社は「Liイオン二次電池の製品規格&安全性試験2011」(2011年9月)を発行し、次いで「(2014 年・実務対応)Liイオン電池の規格・特性・安全性試験・輸送手順」(2014 年1月発行)を発行した。その後、まだ半年足らずであるが、主に安全性試験関係で各種の規格の改定や、電気用品安全法の運用変更などが相次いでいる。こうした中にあって、この種(試験や規格関連)の情報の常として、最新の内容をフォローして置く必要があるため、現在の時点での最新情報を取り上げたレポートを発行することで対応することにした。
日本工業規格のJISは電気用品安全法の技術基準でもあるが、現在の運用は2008年の施行開始の時点から大きく変化している。更にはULとJISの整合性を図ろうとする動きもあり、電池だけでなくその応用製品ごとの安全性評価の基準づくりがグローバルに進行している。このレポートでは、主に“安全性試験の改訂”、“運用と技術解説”、“JIS”、“電気用品安全法”、“UL”、“UN”を扱い、特に最近になって拡大、細分化しているULに関しては、全体が分かり易い様に一覧で示して説明すると共に、膨大な英文ドキュメントの中から要点を和訳して解説している。
安全性試験とその計画、実施と活用は、電池メーカーのみならず、原材料の開発段階においても重要度を増しているが、一方で試験内容の分かり難さと、電池(試験試料)と試験方法をマッチングさせることの調整の難しさから、試験をマニュアル通りに実施することすら不可能といわれる状況がある。本レポートでは、こうした問題に新たに技術解説も加えて、関係業界向けの安全性試験の参考となるように記述した。このレポートが、リチウムイオン二次電池の安全性試験の運用および規格・規定の実務に活用されるものと確信している。
目次
はじめに
1章 安全性試験規格の概要
1.1 事故の発生、電池と電池応用製品
1) 事故の件数カウント
2) 危害(ハザード)の原因
3) 小型で高容量の電池
4) 中型で高性能の電池
5) 安全性試験の必要性
6) 要求事項のクリア
7) 試験項目と試験数
8) 安全性試験の周辺
9) 応用製品との関係
10)原材料>電池>リサイクルの流れ
1.2 安全性試験の設定と電池事故の再現
1) 電池事故の再現(1)予防策の基礎データ
2) 電池事故の再現(2)破壊試験
3) 電池事故の再現(3)定格値との整合性
4) 試験と内容設定の経緯
1.3 法規制、認証システムとガイドライン
1) 応用分野での区分
2) 日本と米国の違い
3) 応用分野と安全性
1.4 製品規格、測定規格と安全性試験規格の関係
1) 製品規格、寸法/電圧/容量など
2) 諸規格の連動
3) 生産、流通と販売
4) ULほかの認証システム
5) 輸送関係のUN
1.5 各種規格の相互関係と互換性
1) 安全性試験規格の互換性
2) JISとIECの互換性
3) 互換性の実体、規格の完成度
4) ULなどの互換システム
1.6 品質保証と製造物責任PL
1) 品質保証
2) 製造物責任PL
2章 JIS規格と電気用品安全法
2.1 リチウムイオン電池(セル)におけるJISの経緯
1) 開発・普及と規格の経緯
2) ガイドラインとJISの制定
3) 電気用品安全法
4) 最新のJIS規格
5) 試験条件などで一律に決め難い点
6) 安全性規格の活用
7) JIS規格の分担(1)
8) 小型リチウムイオン電池の安全性
9) JIS規格の分担(2)
10) セル、モジュールとユニット
11) 自動車用途のJIS
2.2 最新のJISC8715-1(基礎特性) とC8715-2(安全性)
1) 路上走行車を除く
2) 新JISの運用
2.3 新JISC8715-2の安全性試験と要求事項
1) 最新のJIS規格
2) JISC8715-2安全性試験の内容と特徴
3) JIS制定の経緯
4) 産業用リチウムイオン電池への適用
5) JISC8715-2安全性試験の内容と特徴(1)
① 要求事項とは
② 試験の実施数
③ 試験結果の扱い
6) JISC8715-2安全性試験の内容と特徴(2)
① 試験前の電池の状態
② JISC8715-1、-2における充電
③ 機能安全性試験における充電停止
④ 機能安全性試験の求める内容
⑤ 電池の特性のバラツキ
7) 関連する技術情報
2.4 電気用品安全法と最近の運用
1) 2008年施行の基準
2) PSEマーク
3) 電気用品安全法の改正
4) 省令の解釈変更
5) 経済産業省令第三十四号
6) 大型電池への適用
2.5 認証システムへの移行
1) 認証システムとマーク
2) JISの機能
3) 国内エネルギー政策のバックアップ
4) JISの認証制度への移行
3章 UL規格と製品認証システム
3.1 ULの業務と役割
3.2 電池および電池応用製品のUL
1) 電池関係UL規格一覧
2) ULの範囲と範囲外SCOPE
3.3 UL1642の試験内容と改訂動向
1) 規格制定の経緯
2) 対象となる電池
3) UL1642の試験内容
4) 試験項目の分類と内容
5) 各試験の条件
6) POUCH外装セルの追加
7) スマートフォンの電池
8) UL1642の改訂動向
9) 改訂版への採否
10) 改訂後の項目の細分化
3.4 応用製品別のUL規格
3.5 ULおよびTUVの利用事例
3.6 資料(試験項目英文)
4章 UN規格(国連危険物輸送基準勧告)
4.1 UNの危険物輸送とClass9
1) 輸送ラベル表示
4.2 安全性試験(T1〜T8)
1) 区分のマグニチュード
2) UNの安全性試験の特徴
3) 安全性試験T1〜T4(PartⅢ.38,3)
4) 安全性試験T5〜T8(PartⅢ.38,3)
5) 他の安全性規格における準用
4.3 国内外の輸送関係規制との整合性
1) 関連情報ソース
2) 国内法と国際協定
4.4 リチウムイオン電池の輸送実務
1) 輸出手順
5章 電池(セル・モジュール)輸送関係の実務
5.1 UN危険物輸送基準勧告とICAO、IATA
1) 輸出入の状況
2) 船舶および航空機による国際輸送
3) UN(国連)危険物輸送基準勧告(オレンジブック)
4) 輸送時の詳細な区分とラベル
5) ラベル類
5.2 輸送のカテゴリー
1) 種々のケースの輸送の扱い
2) 国際宅配便
3) 電池のみの航空機輸送
4) 国内郵便の扱い
5) 国際郵便の扱い
6) 国内の宅配便
5.3 船舶安全法とIMO
1) 船舶安全法での扱い
2) 船舶安全法の手順
5.4 輸送の準備手順と書類等
1) 輸出の手順
2) 輸送時の添付資料
3) MSDS
4) 危険物申請書
5) 船舶での輸送
6章 安全性試験の技術的な背景
6.1 安全性試験の技術的な背景
6.2 安全性(認証) 試験までのステップ
1) 安全性確保のステップ
2) 試験規格制定の難しさ
3) 本質的な安全性確保
4) 品質保証と安全性
5) 安全性認証の意味するもの
6.3 電池(セル)設計と安全マージン
1) 安全マージン
2) A/C比
3) 正負極の電位
4) 負極電位の上昇
6.4 試験における電池(セル)へのストレス
1) 試験内容との関係
2) 電気(化学)的な試験
3) 機械的な試験
4) 安全性試験の条件と役割
5) 電解液へのストレス
6.5 加熱、発熱と安全性
1) 熱暴走
6.6(強制)内部短絡と釘刺試験
1) 内部短絡試験
2) 釘刺試験
3) ゲル電解液による内部短絡防止
4) セルの外装材と電極構造
6.7 破壊試験と過酷度合の設定
1) 安全性試験は破壊試験
2) 時間の経過と安全性
3) 試験の過酷度合い(1)
4) 試験の過酷度合い(2)
6.8 ハザードレベル
1) ハザードレベル
2) EUCARのハザードレベル(HL)
3) ハザードレベルの進行概念図
4) 分解ガスとセル内圧
5) 応用展開
7章 まとめ
7.1 安全性へのポテンシャルイメージ
1) 企業・メーカーのアクション
2) ビジネスと安全性
3) 業種間の安全性情報
7.2 安全性とコスト
資料1 安全性の事例研究(1)ボーイング787機
1.運輸安全委員会報告(2014/09/24)
2.運輸安全委員会のHPの記載の航空重大インシデントの概要とアクション
3.今回のセルに関するJISC8714試験項目一覧
4.メインバッテリーの概要
5.セルの事故原因推定のマッピング
6.事故原因推定マッピング関係の説明図
資料2 安全性の事例研究(2)EV
(米国内の規制と事故(想定の内と外)
1.高速道路などでのEV規制
2.EVの事故、トラブルはEVの普及を阻害する
3.滞留・蓄積したガスへの引火・爆発は?
4.EV車のリチウムイオン電池の発火(ボルト車の試験事例)
5.事故などで短時間に発生する現象、時間経過と共に現れる現象
資料3 リチウムイオン電池の安全性試験等の受託会社一覧
1.エスペック株式会社
2.エナックス株式会社
3.株式会社NTTファシリティーズ総合研究所
4.エレクセル株式会社
5.日本カーリット株式会社
6.株式会社KRI
7.株式会社コベルコ科研
8.株式会社住化分析センター
9.JFEテクノリサーチ株式会社
10.テュフラインランドジャパン株式会社
11.株式会社東レリサーチセンター
12.株式会社ULジャパン
13.株式会社e・オータマ
14.独立行政法人製品評価技術基盤機構