レポート概要
【本書のポイント】
○長年産業分野で乳化関連製品の開発研究に携わってきた、筆者の経験を基にした実用書です。
○ 乳化剤使用時に欠かせない界面活性剤・相図の知識を、初心者でも理解できるようわかりやすく解説。
実際に応用・最適条件を設定する際に問題となる点をふまえ掲載。
○ 乳化の機構解析や乳化状態の観察・測定・定量化法の実際について。
○ 微細なエマルションの調製や粘弾性挙動の制御についても基礎から解説。
実用系で生きる最新のエマルション、ゲル技術と応用例についても網羅。
【本書のねらい】
近年、乳化剤の選択や乳化プロセスの解析に相平衡図(相図:phase diagram)が用いられるようになって、従来複雑で難解とされていた乳化の機構が明らかにされるとともに、相図を利用した新しい乳化法が報告されている。
乳化系(エマルション)は、水と油のように互いに溶解しない媒質を任意の割合で共存させ得る系であるため、実用性が高く化粧品、医薬品、食品、燃料、ペイントなど、日常生活に密着した様々な分野で用いられている。しかしながら、物理化学のテキストに取り上げられている乳化の基礎理論と、実用系で応用されている特製賦与技術の間にはかなりの乖離がある。そこで、長年産業分野で乳化関連製品の開発研究に携わってきた筆者の経験を基に、できるだけ基礎と応用のギャップを埋められる実用書を目指して、本書をまとめた。
特に、乳化の機構解析や最適条件の設定に役立つ乳化・可溶化と相図に関しては、三角図の読み方や、相図の作り方も含め、初心者が理解できるよう解説を行った。また、微細なエマルションの調製や粘弾性挙動の制御に欠かせない液晶やD相の生成・制御についても、基礎からまとめた。さらに近年注目されているαゲルとその安定化についての最新技術も盛り込んだ。
本書が基礎と実用系エマルションの架け橋になることを願う。
(本文より抜粋)
レポート詳細
著者
ニッコールグループ株式会社コスモステクニカルセンター
執行役員 工学博士 鈴木 敏幸 先生
■ご経歴:
1976.4 花王(株) 入社、東京研究所にて化粧品の開発研究
2002.3 花王(株) パーソナルヘルスケア 研究所 所長
2009.2 花王(株) 退職
2009.3 エスエス製薬(株) 取締役 新製品開発本部長
2011.3 エスエス製薬(株) 退職
2011.4 ニッコールグループ(株)コスモステクニカルセンター 主席研究員
2012.4 ニッコールグループ(株)コスモステクニカルセンター 執行役員、現在に至る。
目次
第1章 エマルションの基礎と状態解析
1.エマルションの種類と状態
2.可溶化系
3.マイクロエマルションとナノエマルション
4.エマルションの生成
4.1 分散法と凝集法
4.2 乳化型決定の因子
4.3 一般的なエマルション調製法
4.4 機械的乳化の原理と乳化装置
(1)低速回転型乳化装置
(2)高速回転型乳化装置
(3)複合型、乳化装置
(4)コロイドミル
(5)高圧ホモジナイザー
(6)超音波ホモジナイザー
(7)膜(細孔)式乳化装置
5.乳化状態の観察・測定と定量化の実際
5.1 乳化型の判定
5.2 乳化状態の観察
(1)目視観察
(2)光学顕微鏡観察
(3)電子顕微鏡観察
5.3 粒子径および粒子径分布の測定
5.4 粘度およびレオロジー特性の測定
6.エマルションの安定性と安定化の理論
6.1 エマルションの崩壊パターンとその確認
6.2 クリーミングとその抑制
6.3 凝集に対する安定化
6.4 合一に対する安定化
6.5 オストワルドライプニングとその抑制
6.6 実用系エマルションにおけるトラブル例と対処
第2章 乳化のための界面活性剤の基礎知識
1.界面活性剤の種類と構造
2.界面活性剤の溶解挙動と会合体の形成
2.1 界面活性剤の溶解挙動
2.2 両親媒性分子の会合体
2.3 分子構造と会合構造 46
3.結晶、液晶、ゲル(αゲル)の状態と見分け方および測定法
3.1 結晶、液晶、ゲルの状態とその転移
3.2 会合状態と構造の測定と解析法
4.乳化剤選択の指標と応用
4.1 親水性/親油性バランス(HLB)の概念
4.2 HLB数
4.3 HLB数システムによる適正乳化条件の設定
第3章 相図を用いた乳化の解析と最適条件の設定
1.相図の基礎知識:読み方と基本ルール
1.1 相と相平衡
1.2 相図の読み方の基本
2.相図で理解する界面活性剤の溶解挙動(界面活性剤/水、2成分系の相図)
2.1 分子構造と基本的な相挙動:1鎖型、2鎖型界面活性剤と相図
2.2 EO付加型非イオン性界面活性剤の溶解挙動
2.3 EO以外の親水基を持つ非イオン性界面活性剤の溶解挙動
3.乳化・可溶化に関わる3成分系の相図(界面活性剤/水/油系)
3.1 相図の基本3パターン
3.2 相図の作成のための基礎と3角図の読み方
3.3 3成分相図の作成法
4.乳化・可溶化解析のための相図の用い方
4.1 乳化方法によって状態が異なる理由
4.2 マイクロエマルションを理解する
4.3 可溶化能と最適可溶化条件を知る
4.4 HLBと相挙動変化
第4章 微細エマルション調製技術
1.転相温度(HLB温度)乳化
1.1 転相温度(PIT)と転相温度乳化の機構
1.2 HLB温度乳化で得られるエマルションの粒子径と安定性
1.3 PITの測定法と乳化剤の選定
2.サブミクロン粒子による低粘度エマルションの安定化
2.1 低粘度エマルションの安定化
2.2 サブミクロンエマルションの生成
3.液晶乳化
3.1 液晶乳化の基本的考え方と適した界面活性剤
3.2 液晶乳化による3相エマルションの生成
3.3 液晶膜の状態解析と高内相O/LCエマルション
4.D相乳化
4.1 D相乳化のプロセスと乳化機構
4.2 D相乳化におよぼすポリオールの作用
5.マイクロエマルションを用いたナノエマルション
5.1 凝集法によるナノエマルション調製
5.2 ナノエマルションの安定化
第5章 高内相比エマルションの安定化
1.逆ヘキサゴナル液晶を用いたW/Oエマルション
2.キュービック液晶を用いたゲルエマルション
3.両連続相用いたW/Oエマルション
第6章 固体粒子、ソフトマターによるエマルション調製
1.ピッカリングエマルション
2.粘土包接体を用いたW/Oエマルション
3.ソフトマターを用いたエマルション調製:3相乳化
第7章 実用系で生きるエマルション、ゲルの技術と応用例
1.相図で見るエマルションの状態
2.高級アルコールのco-surfactant効果と粘弾性挙動の制御
2.1 エマルション中の構造形成と発現条件
2.2 2次粒子エマルションの構造と形成機構
2.3 液晶/αゲル形成によるエマルション物性の変化
3.αゲルの安定化とエマルション、αゲル製剤への応用
3.1 安定なαゲルを生成する界面活性剤の分子構造と要因
3.2 αゲル形成エマルションの調製
3.3 αゲル微細分散系の調製
4.自己乳化液晶ジェルの調製と応用
4.1 高含油ラメラ液晶ジェルの生成
4.2 液晶ジェルの自己乳化性とクレンジング機構
5.両連続(bicontinuous)マイクロエマルションを用いた高可溶化製剤
6.両親媒性脂質を用いたエマルションとその応用
6.1 脂質分散型マルチラメラエマルション
6.2 脂質エマルションからのナノエマルションゲル
7.両親媒性高分子を用いた乳化と撥水性O/Wエマルション