レポート概要
★ 農業資材(フィルム、添加剤、ハウス資材)と園芸施設(パイプハウス・植物工場等)の技術開発を体系的にまとめた類書のない書籍!
★ ”グローバル市場において何が求められているのか? どんな技術・機能性材料が望まれているのか?” 技術開発の最前線で活躍する国内・海外の著名研究者、メーカー技術担当者によって書かれた最新の技術・市場動向!
★ 次世代技術として求められる結露・省エネ・高温・病害虫対策としての各種材料技術・高機能化の現状と将来展望!
★ フィルムの高機能化を支える上で重要な添加とコーティング技術!
★ 海外市場におけるフィルム・施設の技術・市についても解説!
★ 各資材使用による具体的な栽培事例とその効、環境影響など詳細に解説!
★ 産官学の取り組みから分かる農業被覆資材・設の先進技術を支える政策動向!
【発刊にあたって】
農業用ビニルの発売により、本邦における施設栽培は飛躍的に発展した。消費者へ周年的に新鮮な園芸作物を届けることが可能となり、食生活にも大きな影響を及ぼしている。近年は、農業用被覆資材は保温目的で低温期のみ展張するのではなく、耐候性が著しく向上し、長期にわたって利用可能となっている。さらには、光や温度などの栽培環境をコントロールするための機能が付加されており、より高度な環境制御を可能とし、省エネ、環境保全、並びに安全な農作物づくりに寄与している。植物工場をはじめ、大規模経営が普及しつつある昨今において、高機能性農業用フィルムの開発・利用はますます注目されていくであろう。
一方で、原油の高騰による生産コストの増加、海外の低価格農産物との競争、異常気象、地球温暖化、農業従事者の減少など多くの課題がある中で、生産効率を向上し、安定的でかつ安全な農作物を生産するためにも、さらなる光と植物との生理的な関係の解明が進展し、多様な機能を有する農業用フィルムの開発が求められる。
これまでに施設被覆資材に関する書籍はいくつか出版されているが、その多くは各種フィルムの特性についての記述である。しかし本書は、その特性を作り出しているフィルムの添加剤とその効果、新しい機能性農業用フィルムのメカニズムと施設への利用、植物工場への応用、さらに近年の市場の動向など、産官学が協力して、その道の専門家が様々な面から詳細に解説している。
本書は、農業被覆資材を現在利用している方や利用を考えている方のみならず、フィルム開発・利用に携わっている企業、研究者の方にもぜひ一読していただき、今後の研究開発、普及の一助となることを期待する。
著者:高知大学 西村安代(2014年8月)
レポート詳細
対象
農業用フィルム・被覆資材・園芸施設に携わる全ての技術者・研究者・企業担当者
執筆者
西村 安代 |
高知大学 教育研究部 自然科学系農学部門 准教授 博士(農学) |
根岸 由典 |
(株)ADEKA 樹脂添加剤開発研究所 添加剤研究室 室長 |
三寺 太朗 |
(株)ADEKA 樹脂添加剤開発研究所 安定剤研究室 室長 |
浜本 浩 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 野菜研究調整監 博士(農学) |
後藤 章 |
東罐興産(株)市場開発部 開発課 課長 |
ミシリ・ヤロン |
(株)ケーアイエヌ(K.I.N Co.) 代表取締役 |
土森 淳 |
アキレス(株) 滋賀プラスチック工場 生産技術課 課長 |
江口 義昌 |
AGCグリーンテック(株) 営業本部 統括部長 |
坂井 久純 |
(株)ユニック 執行役員 |
川嶋 浩樹 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター・傾斜地園芸研究領域 上席研究員(傾斜地野菜生産研究グループリーダー) 博士(農学) |
大星 光弘 |
経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業政策課 課長補佐 |
内容
第1章 農業用フィルム・資材・園芸施設の種類と技術的潮流、技術課題
はじめに
1.施設園芸の現状
2.農業用フィルム
2.1 農業用フィルムの変遷
2.2 農業用フィルムの課題と潮流
3.園芸施設の潮流と課題
第2章 農業用フィルムの添加剤とその効果、応用例、市場動向
第1節 UVA・HALS のメカニズムと技術的特徴、応用例
はじめに
1.光安定剤とは
2.紫外線吸収剤(UVA)
2.1 紫外線吸収剤の作用機構
2.2 紫外線吸収剤の特徴
2.2.1 ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
2.2.2 ベンゾフェノン系紫外線吸収剤
2.2.3 トリアジン系紫外線吸収剤
3.ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)
3.1 HALS の作用機構
3.2 HALS の特徴
3.2.1 二級アミン( > N-H)HALS
3.2.2 三級アミン( > N-R)HALS
3.3.3 アルコキシルアミン( > NO-Alkyl)HALS
4.紫外線吸収剤(UVA) 及びヒンダードアミン系光安定剤(HALS) の応用例
4.1 UVA とHALS の効果の違い
4.2 高分子材料の厚みの影響
4.3 充填剤の影響
4.4 使用環境の影響
5.まとめ
第2節 酸化防止剤のメカニズムと技術的特徴、応用例
はじめに
1.劣化と酸化防止剤
2.酸化防止剤の種類と作用機構
2.1 ラジカル捕捉剤
2.1.1 フェノール系酸化防止剤
2.2 過酸化物分解剤
2.2.1 リン系酸化防止剤
2.2.2 硫黄系酸化防止剤
3.酸化防止剤の効果
3.1 加工時での酸化防止剤の効果
3.2 使用時での酸化防止剤の効果
4.まとめ
第3節 可塑剤のメカニズムと技術的特徴、応用例、市場動向
はじめに
1.可塑剤の基本的な作用機構
1.1 可塑剤と
1.2 可塑剤の作用機構
2.可塑剤の種類と特徴
2.1 可塑剤の種類
2.2 各種可塑剤の特徴
2.2.1 脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
2.2.2 フタル酸エステル系可塑剤
2.2.3 トリメリット酸エステル系可塑剤
2.2.4 エポキシ系可塑剤
2.2.5 りん酸エステル系可塑剤
2.2.6 ポリエステル系可塑剤
2.2.7 その他の可塑剤
3.可塑剤の市場動向
4.おわりに
第3章 農業用フィルムの栽培作物への影響評価
はじめに
1.被覆下環境調査
1.1 光・放射環境
1.2 温湿度環境
2.作物栽培試験
2.1 試験区設計
2.2 作物栽培
2.3 生育・収量調査
2.4 重量の測定について
2.5 その他
3.データの見方
4.実践例
4.1 背景・目的
4.2 材料と方法
4.3 結果とその解析
第4章 農業用フィルム・関連資材のメカニズムと技術的取り組み、施設使用例、市場動向
第1節 農業用PO フィルムのメカニズムと技術的取り組み、施設使用例、市場動向
はじめに
1.農PO(ポリオレフィン)フィルムのメカニズム
1.1 原料
1.2 構造
1.3 農ビとの比較による特徴
1.4 デメリット
2.農PO(ポリオレフィン)フィルムの変遷
2.1 黎明期
2.2 確立期
2.3 成長期
3.機能性農PO(ポリオレフィン)
3.1 当社の機能性農PO(ポリオレフィン)
4.農PO(ポリオレフィン)の今後の市場動向
4.1 省エネ対策
4.2 高温対策
4.3 病害虫対策
4.4 光環境調節資材
4.5 複合資材
5.最後に
第2節 海外における農事用PO フィルムの技術的取り組みと施設使用例
はじめに
1.夜間における温室暖房の為の太陽熱利用
1.1 化石燃料の高騰によるコスト増と収入減
1.2 太陽熱エネルギー利用による温室暖房
1.3 『エデン』ファームでの実験・開発の背
1.4 夏物作物生産の為の冬季に於ける太陽熱エネルギー利用による温室暖房の先進的手法
1.5 まとめ
第3節 農業用塩ビフィルムのメカニズムと技術的取り組み、施設使用例、市場動向
はじめに
1.農業用塩ビフィルムのメカニズム
1.1 透明性
1.2 強度
1.3 防曇性
1.4 防霧性
1.5 光線選択性
1.6 保温性
1.7 作業換気性
1.8 長期耐久性
1.9 光拡散性
2.農業用塩ビフィルムの技術的取り組みと施設使用例
2.1 遮熱フィルム
2.2 保温性強化農ビ
3.農業用塩ビフィルムの市場動向
第4節 農業用フッ素フィルムのメカニズムと技術的取り組み、展張実績、市場動向
はじめに
1.フッ素樹脂フィルムとは
1.1 フッ素フィルムに使用される樹脂と用途
1.2 農業用途フッ素フィルムの歴史
1.3 農業用フッ素フィルムの特長
1.3.1 原料と製膜 機械特性
1.3.2 光学特性
1.3.3 防汚性
1.3.4 流滴性
2.農業用フッ素樹脂フィルムの現状
2.1 農業用フッ素フィルムの固定方法
2.2 植物工場への導入利用
2.2.1 農研機構や大学等の導入事例
2.2.2 農業法人や民間での導入事例
2.2.3 植物工場への新しい取組み
2.2.4 農業構造の変化
2.2.5 次世代型施設園芸(太陽光利用型植物工場)
3.農業用フッ素樹脂フィルムの課題
3.1 農業用フッ素フィルムの開発取組み状況
4.非農業用途向け(膜構造物用途)フッ素樹脂フィルム
5.おわりに
第5節 農業用生分解性マルチフィルムのメカニズムと技術的取り組み、使用例、市場動向
はじめに
1.マルチフィルムについて
1.1 マルチの機能
1.2 世界のポリマルチフィルム
1.3 ポリマルチの欠点
1.4 生分解性マルチの登場
2.生分解性プラスチックとは
2.1 生分解性マルチはどのように分解するのか?
2.2 生分解性マルチの使用
2.3 生分解性マルチのメリット
2.3.1 省力面のメリット
2.3.2 環境面のメリット
2.3.3 安全面のメリット
2.3.4 将来性のメリット
2.3.5 経済面のメリット
2.4 作物別の具体的メリット
2.5 使用上特に注意する点
3.コスト評価
4.安全性
5.生分解性マルチの原料と製造
6.今後の課題
6.1 最近実施した委託試験結果(ABA 会員市販マルチの圃場分解試験)
6.2 普及を阻む要因
第6節 ハウス用ポリカーボネート資材のメカニズムと技術的取組、市場動向
はじめに
1.ハウス資材としてのポリカーボネート
1.1 ポリカーボネート資材の構造
1.2 ポリカーボネートの物理的・光学的性質
1.2.1 温度特性
1.2.2 断熱と熱伝導係数
1.2.3 光学特性
1.3 その他の特性
1.3.1 遮音性能
1.3.2 耐薬品性( 化学的耐久性)
1.3.3 耐火性
1.3.4 紫外線保護
1.3.5 衝撃強度
1.3.6 曲げ加工に関して
2.特殊コーティングによる付加価値
2.1 特殊コーティング加工
3.おわりに
第5章 農業用光学フィルムの開発と技術的特長、耐候性・耐久性・光透過特性、栽培試験例
はじめに
1.紫外線カット(除去)フィルム
1.1 紫外線と植物
1.2 紫外線カットフィルムの開発
1.3 紫外線カットフィルムの栽培試験例と効果
2.赤外線カットフィルム
2.1 赤外線と植物
2.2 赤外線カットフィルムの開発
2.3 赤外線カットフィルムの栽培試験例と効果
2.3.1 赤外線吸収型フィルム
2.3.2 赤外線反射フィルム
3.散乱光型フィルム
3.1 散乱光型フィルム
4.波長変換フィルム
4.1 波長変換フィルム
4.2 波長変換フィルムの開発と栽培試験
5.おわりに
第6章 施設園芸における被覆断熱資材の役割とその保温・断熱性能・効果、研究動向
はじめに
1.温室における伝熱と保温
1.1 温室における伝熱
1.2 温室における保温と被覆資材
2.被覆資材の保温特性
2.1 被覆資材の保温特性
2.2 反射性資材
2.3 透明被覆資材
3.保温被覆の方法と効果
3.1 温室における保温被覆
3.2 2重被覆
3.3 カーテン
3.4 外面被覆
3.5 その他
4.多層断熱被覆資材の断熱性とその効果
4.1 布団資材の断熱性
4.2 普及に向けた課題
5.まとめ
第7章 農商工連携を通じた植物工場支援の取り組み
はじめに
1.現在の植物工場の状況
2.具体的な取り組みの事例
2.1 独立行政法人産業技術総合研究所の取り組み
2.2 公立大学法人大阪府立大学の取り組み
2.3 農業生産法人グランパファーム(岩手県陸前高田市)
2.4 農業生産法人(株)ベジ・ドリーム栗原(宮城県黒川郡大衡村)
2.5 シャープ(株)(アラブ首長国連邦)
2.6 うれし野アグリ( 株)(三重県松阪市)
3.平成26年度の支援事業(平成26年度グローバル農商工連携推進事業)
おわりに