ポイント
エポキシ樹脂を更に活用するための硬化反応解析・制御を扱った専門技術書!!
各種エポキシ樹脂と硬化剤の特徴、その反応メカニズムを解説!!
硬化反応解析から硬化制御による機能化・応用技術を一挙掲載!!
レポート概要
【刊行にあたって】
エポキシ樹脂は,広い分野で便利に使われている樹脂であるが,エポキシ基を持った主剤と反応する硬化剤を組み合わせるため,その種類はかなり多い。特に硬化剤については,その選択によって大きく性質,性能が変化するので,目的にあった硬化剤の選択が要となってくる。このために,いろいろな硬化剤との反応メカニズムへの理解が,要求される機能を満たす良い物性の硬化物を得るために重要であり,その解析方法を把握しておくことが要求される。
熱硬化性樹脂に属するエポキシ樹脂は,モノマーの段階で安定である一方で,活性水素を持つ付加型だけでなく,自己重合を行うための触媒硬化も可能であり,いろいろな硬化剤との反応ができるという,相反する性質を持っている。硬化の段階では,環状エーテル部の開環反応ゆえに縮合水のような揮発成分を伴わず,かつ硬化収縮が抑えられるといった特徴を持つ。さらに,硬化後は安定した架橋構造により,強度,耐薬品性,電気特性あるいは密着性などに優れ,総合的に高い物性が得られる。このような特徴から,とても便利で有用な材料であり,化学構造から様々な性能を検討することができる点で魅力的な樹脂といえる。一方で,エポキシ樹脂に対する要求性能は益々高くなってきており,市場ニーズに応える製品を作るためには樹脂と硬化剤の最適な組み合わせ設計が必要であり,同時に詳細な硬化メカニズムの解析や各種物性評価,硬化度の最適化,反応速度の安定化といった化学反応の制御も求められるので,正に本書のテーマである硬化メカニズムの解析と機能設計が重要となってきている。
本書では,エポキシ樹脂の分野で活躍されておられる方々にお願いして,比較的基礎的なところから,エポキシ樹脂,硬化剤とその硬化メカニズム,硬化反応の解析技術,そして硬化反応に基づいた機能性付与についての様々なアプローチを取りあげて,高機能化への設計指針をまとめることを狙いとした。章のテーマあるいは著者のお立場によっては目的とする応用分野が限定されている部分もあるが,総じて基礎的かつ一般的な内容として,エポキシ樹脂の硬化反応をいかに捉えて,これを機能性付与に繋げていくことができるかを取りまとめさせていただいた。本書を利用いただくいろいろな分野の方々のお役に立てるものにしたいと願っている。最後に,執筆をお願いした各分野の第一人者としてご活躍の皆様には,ご多忙の中にもかかわらず本書の執筆を快諾いただき,刊行に至ることができましたことに,監修者として感謝申し上げる。また,本書の企画と出版に際して?シーエムシー出版編集部の伊藤雅英氏にも厚く御礼申し上げたい。
(「巻頭言」より一部抜粋)
レポート詳細
著者一覧
久保内昌敏 東京工業大学
高橋昭雄 横浜国立大学
平井孝好 三菱ケミカル(株)
中原和彦 日鉄ケミカル&マテリアル(株)
鈴木弘世 (株)ダイセル
須藤篤 近畿大学
鈴木敏弘 埼玉化成技術研究所
永島田貴之 新日本理化(株)
林弘司 DIC(株)
室伏克己 昭和電工(株)
熊野岳 四国化成工業(株)
玉祖健一 (株)ADEKA
山崎秀樹 (株)日東分析センター
吉井正樹 (株)セイロジャパン
大谷肇 名古屋工業大学
大賀将範 北興化学工業(株)
神谷和伸 デクセリアルズ(株)
有光晃二 東京理科大学
岸肇 兵庫県立大学
有田和郎 DIC(株)
三村研史 三菱電機(株)
竹澤由高 日立化成(株)
西田裕文 金沢工業大学
斎藤礼子 東京工業大学
目次
【第1編 エポキシ樹脂とその特徴】
第1 章 エポキシ樹脂とは
1 電子材料用エポキシ樹脂
2 エポキシ樹脂の高耐熱化
3 複合材料用エポキシ樹脂
第2 章 ビスフェノール系エポキシ樹脂
第3 章 芳香族構造を有するエポキシ樹脂の樹脂特性と硬化物特性について
1 はじめに
2 ナフタレン構造を主鎖に導入したエポキシ樹脂の材料およびその硬化物の特性4)
2.1 各種ナフタレン系アラルキル型エポキシ樹脂の材料設計
2.1.1 合成
2.1.2 樹脂性状
2.2 エポキシ樹脂硬化物の基礎評価(ニートレジン評価)
2.2.1 硬化物作製
2.2.2 硬化物特性の概要
2.2.3 耐熱性と吸水性
2.2.4 誘電特性
2.3 エポキシ樹脂硬化物の実用評価(フィラー配合評価)
2.3.1 硬化物作成と硬化物特性
2.3.2 難燃性と熱分解安定性
3 芳香族構造を側鎖へ導入したエポキシ樹脂の材料およびその硬化物の特性5)
3.1 芳香族変性エポキシ樹脂の材料設計と硬化物作製
3.1.1 樹脂の合成
3.1.2 硬化物の作製
3.2 芳香族変性エポキシ樹脂の硬化物評価(ニートレジン系およびフィラー配合系)
3.2.1 側鎖への芳香族置換基の導入効果
3.2.2 芳香族変性種の影響
3.2.3 難燃性評価
3.2.4 ベース樹脂構造と側鎖への芳香族置換基の変性率が物性に与える影響
4 まとめ
4.1 芳香族構造を主鎖に導入したエポキシ樹脂の特徴について
4.2 芳香族構造を側鎖に導入したエポキシ樹脂の特徴について
4.3 応用展開
第4 章 脂環式エポキシ樹脂
1 はじめに
2 脂環式エポキシ樹脂の合成法
3 脂環式エポキシ樹脂の種類と性状
4 脂環式エポキシ樹脂の反応性と硬化物物性
4.1 脂環式エポキシ樹脂の反応性
4.2 酸無水物の硬化物物性
4.3 熱カチオンの硬化物物性
4.4 UV カチオンの硬化物物性
4.5 フェノール樹脂の硬化物物性
5 脂環式エポキシ樹脂の代表的な用途
6 LED 封止材
6.1 LED 封止材の変遷
6.2 エポキシ樹脂系封止材の高機能化の取り組みと性能評価
7 おわりに
第5 章 天然物由来のエポキシ樹脂
1 はじめに
2 バニリン由来のエポキシ樹脂
3 オイゲノール由来のエポキシ樹脂
4 イソフラボン由来のエポキシ樹脂
5 D-グルコースおよびその誘導体由来のエポキシ樹脂
5.1 D-グルコース由来のエポキシ樹脂
5.2 イソソルバイドを原料とするエポキシ樹脂
5.3 イタコン酸を原料とするエポキシ樹脂
6 総括
【第2編 硬化剤とその硬化メカニズム】
第6章 エポキシ樹脂硬化剤(硬化メカニズムの基礎)
1 エポキシ硬化剤の概要
2 エポキシドの反応性
2.1 酸触媒開環反応
2.2 塩基触媒開環反応
3 エポキシ樹脂硬化剤の種類
4 エポキシ樹脂硬化剤の具体例
4.1 脂肪族ポリアミン
4.2 ポリアミドアミン
4.3 芳香族ポリアミン
4.4 酸無水物系
4.5 フェノール樹脂系硬化剤
4.6 三級アミン
4.7 低温硬化
4.8 ジシアンジアミド
5 おわりに
第7 章 酸無水物系硬化剤の特徴と機能性付与
1 はじめに
2 酸無水物の種類と特徴
2.1 液状酸無水物
2.2 固形酸無水物
3 酸無水物使用時のポイントおよび注意事項
3.1 酸無水物配合量の最適化
3.2 吸湿による酸無水物の特性低下
4 硬化物性の改善
4.1 耐熱性の改善
4.2 透明性の付与
4.3 耐湿性の改善
4.4 可撓性の改善
4.5 薄膜硬化性の改善
5 安全衛生上の留意点
第8 章 フェノール系硬化剤
1 はじめに
2 合成
3 硬化機構
4 フェノール系硬化剤の種類と特徴
4.1 ノボラック系硬化剤
4.2 アラルキル系硬化剤
4.3 縮合多環芳香族含有型
4.4 脂肪族含有型
4.5 窒素含有型
4.6 リン含有型
4.7 その他フェノール系化合物:活性エステル系硬化剤
5 おわりに
第9 章 チオール系硬化剤
1 はじめに
2 エポキシ樹脂の硬化機構
3 チオール系硬化剤によるエポキシ樹脂組成物
4 チオール系硬化剤の構造とその反応機構
5 チオール系硬化剤による低温硬化と速硬化
6 硬化温度とゲル化時間の関係
7 チオール系硬化剤を用いた硬化物の特徴
7.1 チオール系硬化剤の添加効果
7.2 熱的特性
7.3 体積収縮率
7.4 機械強度
7.5 耐水性および耐酸・塩基性
8 おわりに
第10 章 イミダゾール系硬化剤
1 イミダゾールとは
2 硬化剤(硬化促進剤)としてのイミダゾールの特徴
3 イミダゾールの構造と反応性
4 封止材料における硬化促進剤
5 代表的なイミダゾール類
第11 章 潜在性硬化剤
1 はじめに
2 熱潜在性硬化剤
2.1 固体分散型
2.1.1 ジシアンジアミド
2.1.2 アミンアダクト型潜在性硬化剤
2.1.3 マイクロカプセル型潜在性硬化剤
2.1.4 包接型潜在性硬化剤
2.2 反応性基ブロック型
2.2.1 オニウム塩系熱カチオン重合開始剤
2.2.2 ビニルエーテルブロックカルボン酸
3 光潜在性硬化剤
3.1 反応性基ブロック型
3.1.1 オニウム塩系光カチオン重合開始剤
4 湿気潜在性硬化剤
4.1 反応性基ブロック型
4.1.1 ケチミン
5 おわりに
【第3編 硬化剤制御技術】
第12 章 反応解析(モデル化合物を用いた硬化追跡)
1 はじめに
2 エポキシ樹脂とアミン硬化剤の反応
3 評価装置の特徴と解析方法
3.1 示差走査熱量測定(DSC)
3.2 赤外分光法
3.3 二次元相関解析
4 分析データの解釈
4.1 m-DSC による測定結果
4.2 熱走査IR 測定結果と摂動相関二次元相関解析結果
4.3 熱走査NIR 測定結果と摂動相関二次元相関解析結果
4.4 結論
5 最後に
第13 章 反応速度式による硬化度の定量化法
1 はじめに
2 反応速度式
2.1 n 次式モデル(n-th order model)
2.1.1 1 次式モデル
2.1.2 2 次式モデル
2.1.3 n 次式モデル
2.2 自触媒モデル(Autocatalytic model)
2.3 Kamal モデル
2.4 拡散制御モデル(Diff usion control model)
2.5 Model-free kinetics(MFK)法
3 反応パラメータ(反応速度式の係数)の求め方
4 反応速度式の活用例
4.1 硬化温度と硬化反応速度の推定
4.2 非等温過程における硬化反応速度の推定
4.2.1 n 次式モデルの場合
4.2.2 Kamal モデルの場合
4.3 成形過程における硬化度の推定
4.4 流動解析における硬化・流動データとしての活用
第14 章 質量分析法によるエポキシ樹脂の熱硬化過程解析
1 はじめに
2 Py-GC-MS によるエポキシ樹脂の熱硬化反応挙動解析
3 MALDI-MS によるエポキシ樹脂初期硬化反応生成物の解析
4 超臨界メタノール分解を組み合わせたMALDI-MS によるエポキシ樹脂中間/最終硬化物の解析
第15 章 硬化促進剤の潜在化
1 はじめに
2 リン系硬化促進剤
2.1 トリフェニルホスフィン(TPP)
2.2 トリ(p-トリル)ホスフィン(TPTP)
2.3 テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(TPP-K)
2.4 テトラブチルホスホニウムラウレート(TBPLA)
2.5 テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート(TBP-3S)
3 潜在化の重要性
3.1 樹脂組成物作製後の,室温における保存安定性
3.2 硬化初期の潜在化(硬化反応時,低粘度時間の長期化と一定時間経過後の急速硬化)
4 潜在性硬化促進剤
4.1 テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート(TPP-MK)
4.2 ビス(テトラブチルホスホニウム) ジハイドロジェンピロメリテート(BTBP-ピロメリット酸)
5 近年の取り組み
5.1 テトラブチルホスホニウムクレゾールノボラック3 量体塩(TBP-3PC)
6 硬化促進剤取り扱い上の注意
6.1 リン系硬化促進剤の配合方法
6.2 硬化促進剤と他材料との相互作用
7 おわりに
第16 章 マイクロカプセル化による硬化性制御
1 はじめに
2 アルミニウム錯体-シラノール化合物系複合触媒について
3 アルミニウム錯体-シラノール化合物系複合触媒の潜在化法について
4 熱応答性マイクロカプセルについて
5 界面重合法によるアルミニウム錯体系複合触媒のマイクロカプセル化
6 アルミニウム錯体のマイクロカプセル化
7 カプセル化材料の調整による硬化性の制御
7.1 アルミニウム錯体とカチオン重合性に優れる反応性材料のカプセル化
8 アルミニウム錯体と有機シラノール化合物のカプセル化
9 おわりに
第17 章 エポキシ樹脂の光硬化 ~光反応とその増幅~
1 はじめに
2 新規光塩基発生剤の開発と光アニオン硬化への応用
2.1 どのような塩基を光で発生させればよいか
2.2 非イオン性光塩基発生剤の系
2.3 イオン性光塩基発生剤の系
3 影部の光硬化~光反応の増幅~
3.1 酸・塩基増殖反応
3.1.1 酸増殖剤を利用した影部の光カチオン硬化
3.1.2 塩基増殖剤を利用した光アニオン硬化系のデュアル硬化
3.2 光誘起フロンタル重合を利用した影部の光カチオン硬化
3.3 連鎖硬化剤の利用
4 おわりに
【第4章 硬化反応と機能性付与】
第18 章 ポリマーブレンドによるエポキシ樹脂の強靭化
1 はじめに
2 ゴム添加によるエポキシ樹脂の強靭化
3 熱可塑性ポリマー添加によるエポキシ樹脂の強靭化
4 自己組織化エポキシ/BCP ナノブレンドの相構造形成と強靭化
5 おわりに
第19 章 高耐熱性エポキシ樹脂の分子設計と開発事例
1 はじめに
2 目的
3 エポキシ基濃度・エポキシ基数と諸特性の関係
3.1 ガラス転移温度
3.2 吸湿率
3.3 誘電率
3.4 誘電正接
3.5 熱膨張率
4 構造と化学的耐熱性の関係
5 高耐熱性特殊エポキシ樹脂の開発事例
6 まとめ
第20 章 高熱伝導性付与(熱伝導フィラー)
1 はじめに
2 BN 粒子を用いた樹脂複合材料の高放熱化
3 絶縁信頼性向上
4 今後の展望
第21 章 高熱伝導性付与(メソゲン基導入)
1 はじめに
2 メソゲン基導入によるエポキシ樹脂の高熱伝導化の考え方
3 メソゲン基導入エポキシ樹脂単独硬化物での高熱伝導化事例
3.1 ポリドメイン構造を有する等方的に高熱伝導化したエポキシ樹脂
3.2 モノドメイン構造を有する異方的に高熱伝導化したエポキシ樹脂
4 高熱伝導コンポジット中でのメソゲンエポキシ樹脂の高次構造
4.1 樹脂単独硬化物とコンポジット中でのみかけの熱伝導率比較
4.2 フィラー高充填系コンポジットでの高熱伝導化
5 おわりに
第22 章 架橋密度制御によるエポキシ樹脂の熱可塑化とTg レス化
1 はじめに
2 エポキシ樹脂の熱可塑化
3 エポキシ樹脂のTg レス化
4 熱可塑エポキシ樹脂をマトリックスとするFRP の特性
5 Tg レスエポキシ樹脂をマトリックスとするFRP の特性
6 おわりに
第23 章 エポキシ樹脂とポリシラザン由来シリカとの複合化による機能性向上
1 はじめに
2 パーヒドロポリシラザン前駆体
3 PHPS を用いたエポキシ樹脂-シリカナノ複合体の合成
4 エポキシ樹脂-シリカナノ複合体の特性
5 最後に