レポートナンバー 0000026204
低炭素社会とバッテリーアグリゲーション
株式会社シーエムシー・リサーチ
〜 リチウムイオン蓄電池の寿命劣化と経済性 〜
Low Carbon Society and Battery Aggregation
発刊日
2020/03/19
言語日本語
体裁A4/125ページ
レポート概要
【本書の特徴】
- 蓄電池の劣化がバッテリーアグリゲーションに与える影響を解説!
- リチウムイオン蓄電池のマネジメントと評価試験を解説!
- バッテリーアグリゲーションの蓄電池の候補とその特性を紹介!
- リチウムイオン蓄電池の劣化現象およびそのメカニズムを解説!
- リチウムイオン蓄電池の劣化診断の具体的な手法を紹介!
= 刊行にあたって =
現在, 気候変動を食い止めるためにパリ協定に基づいた温室効果ガス排出量低減の取組が進められています. エネルギー分野では主要な温室効果ガスである二酸化炭素排出量低減のため再生可能エネルギーの導入量が増加しており, 特に風力発電と太陽光発電の導入量は加速度的に増加しています. ただし, その過程で再生可能エネルギーの出力変動や時間帯偏在性の問題が徐々に明らかになり, その対策として電力システム安定化のための仮想発電所の技術開発が進められています.
この仮想発電所に含まれる, 有機的・知的に接続された蓄電池群とそのネットワークのことをバッテリーアグリゲーションと呼びます. バッテリーアグリゲーションに使われる蓄電池の主役はリチウムイオン蓄電池です. リチウムイオン蓄電池の市場は電気自動車の発展とともに今後伸びていくことが予想されますが, 一方でリチウムなどの資源の生産量に限りがあり, その資源的制約の中で需要を満たすために, リユースやリサイクルが進んでいくでしょう. 従って, バッテリーアグリゲーションは必然的に多くのリユースリチウムイオン蓄電池を内包することになります. 多数のリチウムイオン蓄電池を包括的に管理するバッテリーマネジメント技術は, 今後その重要性をさらに増していくことでしょう.
本書は, このリユースリチウムイオン蓄電池を含んだバッテリーアグリゲーションの, 運用経済性の想定課題について, 背景情報を整理し解決の方向性を示します. まず, これからバッテリーアグリゲーションが必要とされていく理由について, エネルギーの起源と電力市場状況の観点から解説します. 次に, バッテリーアグリゲーションの重要基幹技術である様々なエネルギー貯蔵デバイスについて紹介し, その中でのリチウムイオン蓄電池の位置付け・特徴について解説します. そのあと, リチウムイオン蓄電池のバッテリーマネジメント技術について解説します. ここではリチウムイオン電池の「寿命」を広い意味でとらえながら, 各種評価試験をベースとしてバッテリーマネジメントを体系的に整理しています. 最後に, リチウムイオン蓄電池の劣化とその診断手法について解説します. ここでは, とかく電池容量の減少として捉えられがちな劣化を少し広い視点から体系的に整理しています.
これまでモバイル機器や自動車に搭載されてきたリチウムイオン蓄電池ですが, 充放電エネルギー損失の議論があまり進んでいないと感じます. 劣化が充放電エネルギー損失を増大させるという事実が世間に認知されていません. しかしこれからバッテリーアグリゲーションが運用されるようになると, 充放電エネルギー損失はダイレクトに事業性に影響を及ぼし, 徐々にその重要性が周知されていくでしょう. 本書ではバッテリーアグリゲーション全体の充放電エネルギー損失を最適に制御し, その収益性を向上させる技術的方向性を示しました. しかしこの領域の研究開発はまだ始まったばかりです. 本書を手に取られた皆様がこの領域の技術をさらに発展し, またその際に本書が少しでも皆様のお役に立てることを心より願っております.
有馬理仁
レポート詳細
著者
有馬 理仁 大和製罐(株) 技術管理部エネルギーソリューション開発室 開発リーダー
【経 歴】
2006年3月 東京工業大学大学院 生命理工学研究科(修士)修了
2006年4月 大和製罐入社
2009年~ リチウムイオン電池に関する研究、事業化に従事
2017年4月~ 立命館大学 理工学研究科(博士)
2019年3月 IEEE CASS JJC Best Student Award
【研究歴】
リチウムイオン電池の劣化・経済性診断の研究
【所属学会】
IEEE、The Electrochemical Society、電子情報通信学会、エネルギー資源学会、電気学会、電気化学会、情報処理学会
【著 書】
「車載用LIBの急速充電性能・耐久性と市場(第4章)」「EVに最適なバッテリーマネジメント技術と市場(第2章)」(シーエムシー・リサーチ)
「リチウムイオン電池における高容量化・高電圧化技術と安全対策(第10章 第4節)」(技術情報協会)
「リチウムイオン二次電池~高容量化・特性改善に向けた部材設計アプローチと評価手法~(第2章 第1節、第6章 第2節)」(情報機構)
構成および内容
第1章 新エネルギーの背景
1. 地球上のエネルギーの起源
2. 地球温暖化問題と温室効果ガス
第2章 低炭素社会と新エネルギー
1. 新エネルギーの導入状況
2. 各発電手法とその特徴
3. 新エネルギー大量導入の影響
4. 電力需給バランスが崩壊した時に起こること
参考文献
第3章 エネルギー貯蔵デバイス
1. 新エネルギー余剰電力活用のためのエネルギー貯蔵デバイス
2. 各エネルギー貯蔵デバイスの特徴
2.1 蓄熱ヒートポンプシステム
2.2 鉛蓄電池
2.3 ニッケルカドミウム蓄電池
2.4 ニッケル水素蓄電池
2.5 リチウムイオン蓄電池
2.6 レドックスフロー電池
2.7 電気二重層キャパシタ
2.8 リチウムイオンキャパシタ
2.9 水素燃料電池
2.10 圧縮空気貯蔵システム(CAES)
2.11 フライホイール
2.12 超電導電力貯蔵装置
3. 新エネルギー余剰電力貯蔵に向けた社会インフラ開発の方向性
第4章 リチウムイオン蓄電池のマネジメントと評価試験
1. リチウムイオン蓄電池のマネジメント
2. リチウムイオン蓄電池の発火と消火
3. リチウムイオン蓄電池の寿命の定義
4. リチウムイオン電池の安全性試験
4.1 機械的安全性試験
4.2 電気的安全性試験
4.3 環境安全性試験
5. リチウムイオン電池の電池反応特性試験
5.1 電気化学特性試験
5.2 材料特性試験
5.3 反応特性試験
6. 寿命劣化特性試験
6.1 容量劣化特性試験
6.2 効率劣化特性試験
6.3 出入力劣化特性試験
7. 今後のリチウムイオン蓄電池マネジメントの流れ
第5章 新エネルギー大量導入支援と劣化診断
1. IoTとバッテリーアグリゲーション
2. リチウムイオン蓄電池の劣化現象およびそのメカニズム
3. リチウムイオン蓄電池の劣化がバッテリーアグリゲーション運用経済性に与える影響
4. リチウムイオン蓄電池の劣化診断手法
5. バッテリーアグリゲーションの経済最適化運用に向けた劣化診断手法
参考文献