また、各種セミナーや日頃の研究活動を通じて、薬物動態研究におけるLC/MSについては「深く知りたい」「すぐ実践したい」との相反するニーズを感じておりましたので、理論・技術的な観点から記述したセクション及び実際の手順・分析バリデーションの要求事項の観点から記述したセクションの2セクションから構成しています。
現代では人の動きも仕事の動きも速くなり、技術面で核となる人材、技術の鳥瞰図を新しい人に伝えられる人材を確保するのも大変な時代です。その中で、本書をLC/MS定量技術の鳥瞰図を示すものとしてご利用を頂けましたら幸甚です。
目次
第1部 理論編
第1章 イントロダクション
1.定量を視野に入れて質量分析(MS)を使う
1.1 様々な質量分析装置
1.2 質量分析装置の装置構成と分析ワークフロー
1.3 機器分析としての質量分析
1.4 LC-MS結合
1.5 スキャン(Scan)による分析
1.6 SIM(Selected Ion Monitoring)またはSRM(Selected Reaction Monitoring)
による分析
2.LC/MS/MSで定量するということ
2.1 LC/MS/MSの利点・・・高感度、高選択性
2.2 LC/MS/MSにおける注意点・・・多様な妨害因子
3.絶対感度とシグナル対ノイズ比
3.1 絶対感度の重要性
3.2 シグナル対ノイズ比の重要性
第2章 MSについて
1.概要
2.イオン化の特徴(ESI, APCI, APPI)
2.1 LC/MSイオン化の概要
2.1.1 ESI
2.1.2 APCI
2.1.3 APPI
3.イオン化法と化合物の相性
3.1 イオン化するかどうかの観点から
3.2 期待できる感度の観点から
3.2.1 ESI
3.2.2 APCI, APPI
4.MS/MS質量分離部の構造
5.MS/MSを実施する意義
6.MS/MS(SRM)条件最適化
6.1 イオン源のガス流量、ガス温度、イオン源の温度など
6.2 低真空領域の電圧差
6.3 Collision Energyとプロダクトイオンの選択
6.4 その他
6.5 設定のポイント(分子衝突の見地から)
7.MS/MSフラグメンテーション
7.1 MS/MSフラグメンテーションの概要
7.2 CIDにおける単純開裂とはどのようなものか
7.3 CIDで実際に切れる部位はどこか
7.4 MS/MSフラグメンテーションのまとめ
第3章 HPLCについて
1.分離モード
1.1 LCの分離プロセスと用語
1.2 逆相モード
1.3 順相モード
1.4 HILICモード
1.4.1 概要
1.4.2 特徴
1.4.3 メソッド開発
1.5 イオン交換モード
2.LC/MS/MSに利用できるLC移動相の概要
2.1 移動相(水系)について(pH、塩濃度)
2.1.1 概要と前提条件
2.1.2 酸性の移動相(0.1%ぎ酸、0.1%酢酸)pHは2〜3程度
2.1.3 中性の移動相
2.1.4 塩基性の移動相
2.2 移動層(有機溶媒系)について(メタノール、アセトニトリル、THF)
2.2.1 メタノールかアセトニトリルか
2.2.2 THF(テトラヒドロフラン)は検討する価値があるか
3.LC/MS/MS用逆相LCメソッド開発の実際
3.1 はじめの目標:「LC」/MS/MSを行うとは?
3.2 マトリックス効果/イオンサプレッション
3.3 最低限、どの程度保持させるべきか?
3.3.1 保持係数
3.3.2 保持とマトリックス効果
3.4 グラジエントの考え方
3.4.1 アイソクラティック、緩やかなグラジエントと高速グラジエント
3.5 問題があるとき:カラム変更により妨害を回避するには?
3.5.1 カラムのメーカーを変えてみるべきか?
3.5.2 カラムのキャラクターを変えてみるべきか?
第4章 前処理について
1.除蛋白法
1.1 概要
1.2 特徴
2.液液抽出法
2.1 概要
2.2 特徴
3.固相抽出法
3.1 概要
3.2 特徴
3.3 実際
4.FAQ:薬物のタンパク結合と前処理について
5.きれいなサンプル
第5章 定量について
1.定量の基本
2.MSレスポンスの直線性確認
3.内部標準法
4.内標準物質の選択
5.内標準物質の濃度設定の考え方
第6章 器材についてのトピックと利用テクニック
1.固相抽出:基材・担体による差異
1.1 シリカ基材とポリマー基材
1.2 逆相用ポリマーベース固相の素材間の違い
2.逆相カラムの特徴と使い方
2.1 市販ODSカラムの特徴
2.2 分析対象に応じたLCのコツ
第7章 トラブル対策のヒント
1.器材への吸着回避の考え方
1.1 吸着の発見
1.2 吸着の類型(イメージ)と対策
1.3 一般的な吸着対策の考え方
2.測定中の感度変化とその検出方法
3.多価イオン・付加イオンと定量性
4.内因性物質の測定
4.1 サロゲートマトリックス(代替マトリックス)による方法
4.2 標準添加法による方法
4.3 マトリックスを用いない検量線、またはサロゲートマトリックスを用いた検量線を使用し、
実マトリックスを用いた既知濃度試料を定量、解析する方法
5.選択性の問題(三連四重極MSによるSRMを前提として)
5.1 チャンネルがごく近接(m/z 1〜2の違い)していて天然同位体により被りを生じる場合
5.2 フラグメントにより被りを生じる場合
6.LCでのブレークスルーの問題
7.付加イオンの定量への利用
第2部 実践編
第8章 試料を入手してから分析法を立ち上げるまで
1.試料(標準品)の入手とMS測定の準備
1.1 試料(標準品)の入手
1.2 モノアイソトピック質量
1.3 分析対象物質の性質
1.3.1 物理化学的性質
1.3.2 背景情報
1.4 内標準物質の選択
2.MS条件設定
2.1 MS測定(Q1測定)
2.1.1 試料の準備
2.1.2 [M + H]+または[M-H]-の観察
2.1.3 低真空領域パラメーターの最適化
2.2 MS/MS測定(SRM測定)
2.2.1 Collision Energyの設定とProduct Ionの選択
2.2.2 その他パラメーターの設定
2.3 イオン源温度、ガス流量の設定
3.各種条件設定と全体調整
3.1 LC条件の設定とMS再調整
3.2 感度、ダイナミックレンジ確認
3.3 LC及び前処理挙動の確認
3.4 マトリックス試料の検討
3.4.1 マトリックス効果の確認
3.4.2 回収率の確認
3.4.3 定量性の確認
第9章 分析バリデーションの実施
1.背景
2.対象、目的
3.標準品・内標準物質
4.分析法バリデーション
4.1 フル・バリデーション
4.1.1 概要
4.1.2 検討項目
4.1.3 特異性
4.1.4 キャリーオーバー
4.1.5 定量限界
4.1.6 検量線
4.1.7 真度
4.1.8 精度
4.1.9 希釈の妥当性
4.1.10 マトリックス効果
4.1.11 安定性
4.2 部分的バリデーション
4.3 クロスバリデーション
5. 実サンプル(各種薬物動態試験から得たサンプル)の測定
5.1 分析バッチの構成
5.2 分析バッチの採用基準
5.3 検量線レンジについての配慮
5.4 再測定
5.5 再注入
5.6 クロマトグラムの解析(積分)
5.7 Incurred samples reanalysis (ISR)