海洋汚染など、プラスチックの環境問題が顕在化し、従来の石油系プラスチックの代替えとして、バイオマスプラスチックへの関心が高まっており、世界や日本での生産や出荷が拡大している。一方、海洋分解できるバイオマスプラスチックは種類は限られており、そのコストや物性などに課題があるため利用がまだ少なく、特に日本での利用は非常に少ない。そこで今後は、海洋分解性があり低コストなバイオマスプラスチックの開発とその生産の拡大への期待が高い。そして、バイオマスプラスチックについても、プラスチック全体の循環型環境対策の一環として、マテリアルリサイクルの技術とシステムの構築が重要となる。
(「第1 章 バイオマスプラスチックの現状と生産・技術動向、将来展望」より抜粋)
目次
第1章 バイオマスプラスチックの現状と生産・技術動向、将来展望
環境・バイオ・プラスチックリサーチ 位地 正年
はじめに
1. バイオプラスチックの現状と生産・技術動向
1.1 世界の動向
1.2 日本の動向
2. バイオマスプラスチックスの環境対策への寄与と課題
3. 非食用多糖類を使用したバイオマスプラスチックの開発事例
4. 今後の展望:プラスチックの循環型環境対策でのバイオマスプラスチックの役割
おわりに
第2章 バイオマスプラスチックの材料開発動向
第1節 バイオマスアクリル材料系としての環境対応型樹脂の開発と各種用途展開
大成ファインケミカル株式会社 朝田 泰広
はじめに
1. バイオマスアクリル樹脂の原料
2. バイオマスアクリル樹脂の設計と物性について
3. UV硬化技術について
4. バイオマスウレタンアクリレートの設計と物性例について
おわりに
第2節 バイオマスアクリレートの開発動向
東亞合成株式会社 佐内 康之
はじめに
1. 植物由来アクリレートの考え方
1.1 代表的な植物由来原料
1.2 アクリレート化合物への応用
2. 植物由来原料アクリレートの開発事例
2.1 モノアクリレート
2.2 ジアクリレートおよび多官能アクリレート
2.3 アクリルオリゴマー
2.4 その他の応用例
おわりに
第3節 非可食性バイオマスを原料に用いるバイオマスアクリル樹脂の開発
国立研究開発法人理化学研究所 竹中 康将
はじめに
1. 脂肪族バイオマスアクリル樹脂の開発
1.1 クロトン酸エステルのGTP
1.2 ポリクロトン酸エステルの物性
2. 含芳香族バイオマスアクリル樹脂の開発
2.1 桂皮酸エステルのGTP
2.2 ポリ桂皮酸エステルの物性
3. 実用化に向けた検討と課題
おわりに
第4節 米を使ったバイオマスレジンの開発
株式会社バイオマスレジンホールディングス 坂口 和久
はじめに
1. バイオマス原料としてのコメの優位性
2. 混練複合化技術
2.1 バイオマス(=コメ)
2.2 マトリックス樹脂
2.3 添加剤(改良剤および相溶化剤)
2.4 混練装置
3. 物性および製品例
おわりに
第5節 セルロース系バイオマスプラスチックの開発
大阪ガスケミカル株式会社 関田 亮佑
はじめに
1. フルオレンセルロースファイバー(FLCF)について
1.1 FLCF配合樹脂の強度について
1.2 FLCF配合樹脂の耐摩耗性について
1.3 FLCFの繰返し成型可能な樹脂コンパウンドへの応用例
おわりに
第6節 バイオマスポリウレタンの開発動向
三井化学株式会社 山崎 聡
天津天寰ポリウレタン有限公司 森田 広一
はじめに
1.バイオマスポリオール
1.1 ヒマシ由来バイオマスポリオール
1.2 カシューナッツ殻液(Cashew Nutshell Liquid;CNSL)由来ポリオール
1.3 イソソルバイド系ポリオール
2. バイオマスイソシアネート
2.1 植物油由来バイオマスイソシアネート
2.1.1 ダイマー酸ジイソシアネート
2.1.2 長鎖脂肪族ジイソシアネート
2.2 アミノ酸由来のバイオマスイソシアネート
2.2.1 リジンジイソシアネート(LDI)
2.2.2 リジントリイソシアネート(LTI)
3. 1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(1,5-PDI)
3.1 1,5-PDIの特徴
おわりに
第7節 バイオ由来原料を用いた水素添加スチレン系エラストマーの開発と応用
株式会社クラレ 佐々木 啓光
はじめに
1. 「セプトン」BIO-シリーズ
1.1 「セプトン」BIO-シリーズの応用物性
おわりに
第8節 バイオポリアミドの開発動向
アルケマ株式会社 宮保 淳
1. はじめに
2. バイオポリアミドの歴史と現在
3. バイオポリアミドの物性
4. SDGs と COP21 の影響
5. バイオポリアミドの開発動向
5.1 植物由来原料のみからなるポリアミド
5.2 植物由来原料と石油由来原料を組み合わせたポリアミド
5.3 マスバランス方式よる再生可能原料を使用した認証ポリアミド
5.4 研究開発段階のポリアミド
6. バイオポリアミドのサプライチェーンに対する環境的アプローチ
7. バイオポリアミドの将来
7.1 芳香族成分の非石油由来化の進展
7.2 環境特性の正確な評価と情報公開の重要性
7.3 マテリアルリサイクルの推進
おわりに
第9節 革新バイオプロセスを活用した
バイオマスプラスチック製造用モノマーの発酵生産技術開発
公益財団法人地球環境産業技術研究機構 小暮 高久・乾 将行
はじめに
1. コリネ型細菌と増殖非依存型バイオプロセスの特徴
2. 有機酸およびアルコール系バイオマスプラスチックモノマー高生産菌の開発
2.1 乳酸
2.2 コハク酸
2.3 イソブタノール
3. 芳香族系バイオマスプラスチックモノマー高生産菌の開発
3.1 4 -ヒドロキシ安息香酸(4-HBA)
3.2 プロトカテク酸
3.3 4-アミノ安息香酸
3.4 フェノール
おわりに
第3章 バイオマスプラスチックを活用した製品開発の最新動向とバイオマス度向上
第1節 機能性バイオマスコーティング剤の開発動向
日本化工塗料株式会社 遠藤 幸典・瓜生 孝幸
はじめに
1. バイオマスコーティング剤
2. バイオマスAG(アンチグレア)コーティング剤
2.1 AGコーティング剤の課題と要求機能
2.2 UV硬化型バイオマスAGコーティング剤の設計
3. バイオマス離型コーティング剤
3.1 離型フィルムの用途と要求機能
3.2 バイオマス離型コーティング剤の設計
4. バイオマスブリスターパック用接着剤
4.1 ブリスターパック
①熱圧着型
②台紙差込型
③シェルパック型
4.2 熱圧着ブリスターパックの構成と要求機能
①紙・インキ密着性
②プラスチック密着性
③光沢などの塗膜外観
④耐スクラッチ性
⑤耐ブロッキング性
4.3 バイオマスブリスターパック用接着剤の設計
おわりに
第2節 高バイオマス度を誇る環境対応粘着剤の開発
トーヨーケム株式会社 霜村 友基・宮﨑 真樹
はじめに
1. トーヨーケムについて
2. トーヨーケム 環境対応粘着剤製品について
2.1 バイオマス粘着剤について
2.2 生分解性粘着剤について
2.3 超ハイソリッド粘着剤
おわりに
第3節 バイオマスラベルの高バイオマス、バイオマスインキの選定
アサヒ飲料株式会社 林 良祐
はじめに
1. 植物由来原料を使用した資材の展開
1.1 オールバイオマス素材の「三ツ矢サイダーPET1.5L」の展開概要
1.1.1 ラベル
1.1.2 ラベルの高バイオマス化の追求
1.2 バイオマスインキを活用した「アサヒ おいしい水」天然水ブランドの展開概要
1.2.1 バイオマスインキの量産化検討
おわりに
第4節 バイオマスシュリンクフィルムの特徴と事例
サンプラスチック株式会社 大江 正孝
はじめに
1. シュリンクフィルムとは
2. 和装バイオマスシュリンクフィルム「和shu®(わしゅ)」
2.1 和shu®の材料構成
2.2 和shu®開発にあたって
2.3 和shu®の特徴
2.4 用途例
3. 抗菌バイオマスシュリンクフィルム「スカロープレミアム® HT-KS101」
3.1 スカロープレミアム® HT-KS101の材料構成と特徴
3.2 用途例
おわりに
第5節 バイオマスプラスチックフィルム・環境配慮型包装用フィルムの開発
東洋紡株式会社 清水 敏之
はじめに
1. 政府の資源循環戦略とバイオマスプラスチックの位置付け
1.1 リサイクルを前提とした社会システムへの移行
1.2 循環型社会におけるバイオマスプラスチックの位置付け
2. 容器包装分野でのバイオマスプラスチックの動向
2.1 バイオマスプラスチック
2.2 温室効果ガス抑制効果
3. 東洋紡の取組みとバイオマスプラスチックフィルム
3.1 東洋紡のパッケージング用フィルム
3.2 東洋紡のバイオマスプラスチックフィルム
3.3 その他の検討中のバイオマスプラスチックフィルム
おわりに
第6節 植物由来ポリエチレンを使った医薬品容器の開発
大成化工株式会社 山田 浩史
はじめに
1. 医薬品容器の要求事項
1.1 医薬品容器の定義
1.2 医薬品容器に要求されること
2. 医薬品容器における環境対応の課題
2.1 プラスチック容器の課題
2.2 容器の廃棄について
3. バイオプラスチック
3.1 バイオプラスチックとは
3.2 バイオマスPE
3.3 カーボンニュートラル
4. バイオマスPEを使った医薬品容器の開発
4.1 バイオマスPE 固形製剤容器
4.1.1 透湿度
4.1.2 開栓トルク
4.1.3 光線透過
4.1.4 安全性
4.1.5 製品事例
4.2 バイオマスPE点眼容器
4.2.1 蒸散率
4.2.2 ストレスクラック評価
4.2.3 安全性
4.3 バイオマスPE PTPシート
4.3.1 包装機能
4.3.2 安全性
おわりに
第7節 植物油由来エポキシ樹脂の開発と電力用モールド機器への適用
株式会社東光高岳 大竹 美佳・山下 太郎
はじめに
1. 植物油由来エポキシ樹脂の材料選定および評価
1.1 バイオマス素材候補の選定
1.2 配合条件
1.3 評価結果
2. 電力用モールド機器への適用における技術課題
2.1 耐サーマルショック性の向上
2.1.1 耐サーマルショック性の評価方法
2.1.2 エポキシ化亜麻仁油樹脂の耐サーマルショック性
2.1.3 球状溶融石英の高充填による線膨張係数の低減
2.1.4 低温硬化による熱収縮の低減
2.1.5 改良したエポキシ化亜麻仁油樹脂の耐サーマルショック性
2.2 耐サーマルショック性向上と硬化時間短縮の両立
2.2.1 PSQ配合量と耐サーマルショック性の関係
3. 電力用モールド機器の試作検証
おわりに
第4章 バイオマスプラスチックのロードマップ・サプライチェーン・リサイクル特許動向と将来展望
第1節 バイオプラスチック導入ロードマップ
環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室
はじめに
1. プラスチック資源循環を巡る動向
1.1 プラスチック資源循環戦略の策定
1.2 プラスチック資源循環戦略の具体化
1.3 プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律
2. バイオプラスチック導入ロードマップ
2.1 概要とバイオプラスチックの定義
2.2 導入の基本方針
2.3 製品領域別バイオプラスチック導入方針
2.4 導入に向けた国の施策
おわりに
第2節 バイオプラスチック(再生樹脂、生分解性樹脂)の特許出願動向
SK弁理士法人 奥野 彰彦
はじめに
1. スガノミクス+キシダノミクスのカーボンニュートラル宣言の衝撃
2. バイオプラスチック導入ロードマップの政策目標
3. バイオプラスチックとは
4. バイオプラスチックの特許出願動向
5. バイオプラスチックの国際特許紛争
おわりに
第3節 バイオプラスチックの今後の展望
Circular Economy /プラごみ問題に向けた課題とアプローチ・応用展開
三菱ケミカル株式会社 佐野 浩
はじめに
1. プラスチックが支えた社会と課題
2. バイオマスプラスチック
2.1 プラスチック原料としてのバイオマス
2.2 既存プラスチックの置き換え用途
2.3 バイオマス化によって機能が賦与されたプラスチック
2.4 バイオマスプラスチックの課題とアプローチ
3. 生分解性プラスチック
3.1 プラスチック廃棄物の問題と生分解性プラスチック
3.2 生分解性プラスチックの用途と種類
3.2.1 合成系生分解性プラスチック
(1)ポリ乳酸(PLA)
(2)ポリブチレンスクシネート(PBS、PBSA)
(3)脂肪族- 芳香族コポリエステル
(4)ポリグリコール酸(PGA)
(5)ポリカプロラクトン(PCL)
(6)ポリビニルアルコール(PVA)
3.2.2 生物が生産する高分子を活用した生分解性プラスチック
(1)ポリ-β-ヒドロキシアルカン酸(PHA)
(2)熱可塑性デンプン
3.3 生分解性プラスチックの課題とアプローチ
おわりに