医薬品業界では2010年問題として大きくクローズアップされた大型医薬品の特許切れが世界を舞台に起こっている。新薬メーカーの対応は様々であるが、会社の命運を分けるこの重大な時期にジェネリック医薬品とどのように向き合っていくか決断が迫られている。ジェネリック業界にとっては絶好の機会でもあるが、自社製造でジェネリック分野に乗り込む先発医薬品メーカー、海外大手ジェネリック企業の参入もあり、日本の限られたジェネリック医薬品市場を求めて激しい販売合戦が繰り広げられている。ジェネリック業界は乱立による不毛の競争を避け業界再編による方向性を確立することで国内はもとよりアジア、南米のような新興国にも大きく飛躍していくべき時ではないだろうか。
本書では幅広い分野の先生方に現状や問題点、更には課題や展望といったホットなところを執筆していただいた。また、巻末には、【資料】として、医薬品化合物68品目の特許切れ年と売上データ、推定される合成ルートをまとめた。医薬品開発に関わるあらゆる企業の戦略立案の参考として役立つ書籍となっている。無視できないジェネリック医薬品業界の動向を多方面からつかみ、グローバル化の進む中で広い視野を持ち、次のビジネスチャンスを掴んでもらうために、 本書が一助となることを願う。
目次
【概論】
第1章 日本のジェネリック市場における外資系ジェネリック企業に関する研究(角田博道)
1 研究目的
2 市場の担い手(プレーヤー)
2.1 医薬品の分類とマーケット
2.2 日本のジェネリックマーケットの異質性
3 参入障壁
3.1 非関税障壁
3.2 規格,試験方法,試薬
3.3 同一性調査における審査・照会事項
3.4 原薬の結晶形
3.5 規格及び試験方法
3.6 ICHガイドライン
3.7 GMP
3.8 プレミックス
3.9 承認及び薬価収載
3.10 出荷試験
3.11 規格揃え
3.12 適応相違
4 日本の市場構造
4.1 医薬品卸業コスト
4.2 MR方式
5 薬価制度
6 そのほか
第2章 ジェネリック医薬品普及に向けての行政の取り組み(厚生労働省医政局経済課)
1 はじめに
2 これまでの使用促進策
3 数値目標の設定とその後の施策
3.1 医療・介護サービスの質向上・効率化プログラム
3.2 後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム
3.3 平成20年度診療報酬改定
3.4 平成22年度診療報酬改定
3.4.1 薬局の調剤基本料における後発医薬品調剤体制加算の見直し
3.4.2 薬局における含量違いまたは類似した別剤形の後発医薬品への変更調剤
3.4.3 医療機関における後発医薬品を積極的に使用する体制の評価
3.4.4 保険医療機関及び保険医療養担当規則等の改正
4 信頼性向上のための取り組み
5 品質確保に関する信頼の基盤づくり
6 普及啓発のための取り組み
7 新薬の創出とジェネリック医薬品
8 おわりに
第3章 2010年問題の現状と各企業の戦略(橋本光紀)
1 世界経済と医薬品産業
2 世界製薬企業の売上高
3 日本製薬企業の売上高
4 製品別売上高
5 研究開発費
6 2010年問題と特許
7 世界の医薬品市場の推移
8 まとめ―製薬企業の将来―
【業界展望】
第4章 医薬品原体・中間体受託企業の役割と課題(関口文男)
1 はじめに
2 薬ができるまで
3 医薬品の製造開発
4 試薬製造と医薬品製造との違い
5 資源の有効活用
6 受託製造の舞台裏
7 おわりに
第5章 医薬品開発のグローバル化と受託企業の動向(橋本光紀)
1 はじめに
2 医薬品開発の現状
3 受託製造企業の課題と展望
3.1 受託製造企業の課題
3.2 受託製造企業の展望
4 ジェネリック企業の課題
5 製薬企業の今後の展開
第6章 バイオシミラーの欧州での展望と製造プロセス
Biosimilars-European Perspectives and Production Processes Requirements(Holger Ziehr)
1 Introduction
2 The biosimilar regulatory framework in the European Union
3 Biosimilars in the European Union
4 Cell- and process derived protein microheterogenicity
5 Challenges of biosimilar protein manufacturing processes
6 The modular Fraunhofer ITEM antibody platform
6.1 Module cell line
6.2 Module cultivation
6.3 Module purification
7 Resume
第7章 バイオ医薬のための受託の展望(勝村泰彦)
1 バイオ後続品を取り巻く状況
2 バイオ後続品の種類
3 バイオ後続品開発における課題
4 バイオ後続品開発における受託製造業の役割
5 旭硝子株式会社の受託製造事業
【海外市場・企業動向】
第8章 アメリカ(陸 寿一)
1 世界医薬品市場
1.1 医療用医薬品市場
1.2 ジェネリック医薬品市場
1.3 ジェネリック医薬品シェア
1.4 ジェネリック医薬品企業トップ13
2 アメリカ
2.1 医療費・薬剤費
2.2 医療保険制度
2.2.1 公的医療保険
2.2.2 民間医療保険(Private Health Insurance)
2.3 米国医薬品市場
2.3.1 ジェネリック医薬品シェア年次推移
2.3.2 売上高トップ15医療用医薬品企業
2.3.3 売上高トップ20 GE企業
2.3.4 処方数トップ10薬剤
2.4 医薬品価格
2.4.1 先発品の価格設定
2.4.2 GEの価格設定
2.4.3 日米薬価比較
2.5 米国におけるGE使用促進策
2.5.1 政府によるジェネリック医薬品促進キャンペーン
2.5.2 代替調剤とオレンジブック
2.5.3 申請・審査・承認・発売促進薬事政策
2.5.4 第1号GE180日間販売独占権(180‐Day Exclusivity)
2.6 バイオシミラー
2.6.1 米国バイオシミラー医薬品の薬事規制及び承認
2.7 先発・GEメーカー特許和解禁止法案(Pay- for- Delay)
2.8 ANDA審査・承認滞留(Backlog)
2.9 大型医薬品(ブロックバスター)特許切れ問題(Patent Cliff)
2.10 2010年医療制度改革法案
3 おわりに
第9章 中国の医薬産業の近況(嘉屋忠弘,薛 蓮)
1 中国医薬産業
1.1 中国医薬産業の成長
1.2 中国医薬産業の貿易動向
1.3 2009年の医薬品の国際貿易の特徴
2 化学製薬業界の状況
2.1 化学製薬業界の売上の推移
2.2 化学製薬業界の輸出入分析
3 大手製薬企業の現状と動向
4 中国の医薬産業の発展に存在する問題
5 中国医薬市場のこれからの発展について
6 総括
第10章 インドの医薬品原体・中間体企業の動向―拡大を続ける受託製造―(山根 修)
1 はじめに
1.1 日本とインド―環境が整い盛り上がる日印関係
1.2 インドの基本経済指標
2 インドの産業と化学工業
2.1 インドの主要産業―急拡大する業容
2.2 インドの化学工業
2.2.1 インドの化学工業概要
2.2.2 インドの化学工業発展の基盤
2.2.3 日本の主な化学進出企業
3 インドの医薬産業
3.1 日本の医薬進出企業
3.1.1 魅力あるインドの医薬企業
3.1.2 日本の主な医薬進出企業
3.2 インドの医薬産業概要
3.2.1 インドの医薬産業の実像
3.2.2 インドの医薬産業の概要
3.2.3 何故インドが世界の医薬アウトソースのHubと言われるのか
3.2.4 インドの医薬産業を支えたもの
3.2.5 世界のジェネリック市場とインド
3.2.6 インド医薬企業の日本進出
3.3 医薬原体・中間体受託製造概要
3.3.1 受託の定義
3.3.2 世界の受託製造市場の規模
3.3.3 インドの受託製造規模
3.3.4 インドの受託企業の強み
3.3.5 インドの受託企業
3.4 インドの医薬産業の問題点と課題
4 おわりに
【開発】
第11章 ジェネリック医薬品の製剤設計概論(高橋嘉輝)
1 はじめに
2 製剤開発タイムライン
2.1 プレフォーミュレーション
2.2 製剤検討
2.3 スケールアップ,技術移管
2.4 製造販売承認申請資料
3 製剤開発と製剤設計
3.1 原薬の選定
3.2 製剤処方設計
3.2.1 リバース・エンジニアリング(Reverse Engineering)法
3.2.2 付加価値製剤(製剤工夫)
3.3 生物学的同等性
3.4 安定性
4 おわりに
第12章 ジェネリック医薬品の製剤設計(局所皮膚適用製剤)(山内仁史)
1 剤形
2 医薬品添加物
3 製造方法
4 規格及び試験方法,安定性試験
5 生物学的同等性試験
5.1 皮膚薬物動態学的試験
5.2 薬理学的試験
5.3 残存量試験
5.4 薬物動態学的試験
5.5 臨床試験
5.6 In vitro効力試験
5.7 動物試験
6 高付加価値製剤
第13章 特許戦略(田坂一朗)
1 2010年特許切れ問題
1.1 大型新薬の特許切れ
1.2 ジェネリック市場の拡大とジェネリック医薬品大手企業の成長
1.3 ジェネリック医薬品企業の多様化
1.4 ジェネリック市場競争の激化
2 先発医薬品の独占期間
2.1 再審査期間と特許期間
2.2 特許の存続期間延長制度
2.3 医薬品のライフサイクル・マネジメント
3 ジェネリック医薬品の承認と特許
4 ジェネリック医薬品を巡る特許問題
4.1 基本特許と周辺特許
4.1.1 基本特許
4.1.2 周辺特許
4.2 特許の存続期間延長制度
4.2.1 本制度の意義
4.2.2 知財高裁平成20年(行ケ)10458号酢酸リュープロレリン―閉経前乳癌事件
4.3 無効審判
4.3.1 侵害訴訟におけるジェネリック医薬品企業の対抗策
4.3.2 事業戦略としてのジェネリック医薬品企業による無効審判申立て
4.3.3 特許の存続期間延長登録の無効審判
5 ジェネリック医薬品企業の特許戦略
5.1 ジェネリック医薬品企業の経営戦略
5.2 ジェネリック医薬品ビジネスの特許戦略
【資料】
医薬品化合物データ集(68品目)
原薬名/CAS No./構造タイプ/立体化学
商品名/薬効・作用
米国売上高(2009)/特許切れ年
開発者/創製者/創製国/最初の上市年(国)日本承認年
推定合成ルート
文献/特許
1 Alendronate sodium
2 Aripiprazole
3 atorvastatin
4 Bimatoprost
5 Candesartan cilexetil
6 Capecitabine
7 Celecoxib
8 Cevimeline hydrochloride
9 clopidogrel
10 Desloratadine
11 Dolasetron mesvlate
12 Duloxetine hydrochloride
13 Dutasteride
14 Efavirenz
15 Eletriptan hydrobromide
16 Enfuvirtide
17 Eprosartan mesylate
18 Escitalopram oxalate
19 Esomeprazole magnesium
20 Eszopiclone
21 Exemestane
22 Exenatide
23 Ezetimibe
24 Fexofenadine hydrochloride
25 Fluvastatin sodium
26 Gemcitabine hydrochloride
27 Glatiramer acetate
28 Glimepiride
29 Imatinib mesilate
30 Indinavir sulfate
31 Irbesartan
32 Latanoprost
33 Letrozole
34 Levalbuterol hydrochloride
35 Levocetirizine dlhvdrochlorlde
36 Levofloxacin
37 Linezolid
38 Modafinil
39 Montelukast sodium
40 Moxifloxacin
41 Nelfinavir mesylate
42 Nevirapine
43 olanzapine
44 Olopatadine hydrochloride
45 Palonosetron hydrochloride
46 Pioglitazone hydrochloride
47 Pregabalin
48 Quetiapine fumarate
49 Rabeprazole sodium
50 Raloxifene hydrochloride
51 Riluzole
52 Risedronate sodium
53 Ritonavir
54 Rizatriptan benzote
55 Rosiglitazone maleate
56 Rosuvastatin calcium
57 Sildenafil citrate
58 Tazarotene
59 Telmisartan
60 Temozolomide
61 Tiagabine hydrochloride
62 Travoprost
63 Valganciclovir hydrochloride
64 Valsartan
65 Zafirlukast
66 Ziprasidone hydrochloride
67 Zoledronate disodium
68 Zolmitriptan