「フォトニクスポリマー」とは、ポリマー物質学と光学を融合することにより生まれた新しい光機能性ポリマーのことを示す。私たちは、(社)高分子学会の研究部会として2007年に「フォトニクスポリマー研究会」を創設し、フォトニクスポリマーの諸特性の制御、および高効率な新規デバイスの設計とその成形方法など多面的な視野で研究を行ってきた。
そこでフォトニクスポリマーの応用展開を図る上で必要な基礎知識から応用までの最新トピックスを網羅した『最新フォトニクスポリマー材料と応用技術』を出版した。
本書は、情報通信分野、ディスプレイ分野の最先端技術を紹介するだけでなく、新たなフォトニクスポリマーの可能性が期待できる光記録やエネルギー分野の話題も含めてある。読者がフォトニクスポリマーの最新技術を理解するだけでなく、新たなアイデア創出のヒントに活用されることを期待する。
(「はじめに」より抜粋)
目次
第1章 基礎
1 フォトニクスポリマーとは(小池康博)
1.1 フォトニクスポリマーの背景
1.2 高分子と光波の相互作用による機能発現
1.2.1 屈折・反射
1.2.2 散乱
1.2.3 分極
1.2.4 吸収
1.2.5 複合作用
1.3 おわりに
2 フォトニクスポリマーを用いた材料・デバイスの最新動向(平坂雅男)
2.1 光ファイバー
2.2 光学フィルム
2.2.1 輝度向上フィルム
2.2.2 視野角向上フィルム
2.2.3 位相差フィルム
2.2.4 光学フィルムの市場
2.3 バイオミメティックス
2.4 おわりに
3 プラスチック材料の光学レンズへの応用と発展(小松正明)
3.1 はじめに
3.2 プラスチック化に求められる要求品質
3.2.1 低複屈折
3.2.2 低吸水率
3.2.3 その他
3.3 光学用プラスチックの開発
3.4 シクロオレフィンポリマー
4 フォトニクスポリマーとフイルム成形加工(荒川公平)
4.1 位相差フイルムの歴史
4.2 位相差フイルムの機能
4.3 位相差フイルムのフイルム成形
4.3.1 自由幅一軸延伸
4.3.2 固定幅一軸延伸
4.3.3 逐次二軸延伸
4.3.4 斜め延伸
4.4 延伸フイルムの今後
【情報通信編】
第2章 プラスチック光ファイバー
1 POFの概要(小池康博,小池康太郎)
1.1 はじめに
1.2 SI POF
1.3 GI POF
1.4 おわりに
2 新フッ素系高分子の探索と合成法(岡本善之,小池康太郎,小池康博)
2.1 はじめに
2.2 部分フッ素化ポリマー
2.3 全フッ素化ポリマー
2.4 おわりに
3 最新GI型POFの開発と応用展開(田中爾文)
3.1 はじめに
3.2 最新GI型POFの開発
3.3 FONTEXの特徴と応用展開
3.4 おわりに
4 宅内用POFネットワーク(谷口輝行,吉田博次)
4.1 はじめに
4.2 近年の宅内情報化状況
4.3 POFの仕様
4.3.1 GIとは
4.3.2 なぜ大口径
4.4 実配線例
4.5 新素材GI-POF
4.5.1 素材:部分塩素化ポリマー
4.5.2 GI-POF製造法:共押出法
4.5.3 性能
4.6 まとめ
5 通信用POF:最新の市場および技術動向―車載用途を中心として―(中村一己)
5.1 通信分野への用途拡大
5.2 車載ネットワーク
5.2.1 背景
5.2.2 プラスチック光ファイバー(POF)の搭載と普及
5.2.3 車載ネットワーク規格と導入例
5.2.4 ケーブルへの要求特性と規格
5.2.5 今後の展開
5.3 車載以外の通信用途
5.3.1 FA用途
5.3.2 民生用・ホームネットワーク
5.4 まとめ
6 有機フォトリフラクティブポリマー創製と先進情報通信技術(堤 直人)
6.1 はじめに
6.2 フォトリフラクティブ効果とは
6.3 有機フォトリフラクティブ材料
6.4 フォトリフラクティブ効果とその応用
6.5 今後の展望
第3章 光インターコネクション
1 ポリマー光回路(杉原興浩)
1.1 はじめに
1.2 ポリマー光回路材料
1.3 ポリマー光回路簡易作製技術
1.4 ポリマー光回路を用いた接続実装部品例
1.5 フェムト秒誘導自己形成光導波路と簡易接続技術
1.6 まとめ
2 自己形成光導波路と光通信デバイス応用(各務 学,伊縫幸利)
2.1 はじめに
2.2 自己形成光導波路
2.2.1 原理
2.2.2 自己形成光導波路による軸ずれ補正接続
2.3 光通信デバイス応用
2.3.1 LED用光トランシーバ
2.3.2 VCSEL用光トランシーバ
2.4 まとめ
3 複合導波モード高分子薄膜による超高速全光情報処理(長村利彦)
3.1 はじめに
3.2 可視〜近赤外域での超高速光応答材料
3.3 二層高分子導波モード薄膜による高感度過渡応答計測と超高速並列光情報処理
3.3.1 材料の屈折率制御
3.3.2 導波モード薄膜の光誘起複素屈折率変化による並列光情報処理
3.4 おわりに
第4章 量子フォトニクス
1 ナノ光ファイバーによる量子フォトニクスとフォトニクスポリマー技術(白田耕藏)
1.1 量子情報技術の基礎技術
1.2 量子フォトニクスとナノ光ファイバー
1.3 ナノ光ファイバー技術
1.4 フォトニクスポリマー技術との融合的発展
2 ナノインプリントによるフォトニクスポリマー応用 都丸 暁,石原信之
2.1 ナノインプリント技術の概要
2.2 ナノインプリントによる光導波路作製
2.3 まとめ
【ディスプレイ編】
第5章 液晶ディスプレイ用部材
1 高輝度光散乱導光ポリマー(多加谷明広,小池康博)
1.1 はじめに
1.2 光散乱導光ポリマーバックライト
1.2.1 Mie散乱と光散乱導光ポリマー
1.2.2 多重散乱解析とプリズムシートレス光散乱導光ポリマーバックライト
1.3 高濃度系散乱ポリマーを用いた新たなディスプレイシステムの提案
2 光学フィルム
2.1 ゼロ・ゼロ複屈折ポリマーと液晶ディスプレイへの展開(多加谷明広,小池康博)
2.1.1 はじめに
2.1.2 光学ポリマーの複屈折
2.1.3 ゼロ・ゼロ複屈折ポリマーの設計・合成
2.1.4 今後の展望
2.2 偏光散乱フィルム「Imajor(イメージャー)?」の開発(小野光正,串田 尚)
2.2.1 Imajor?の特徴
2.2.2 Imajor?の特性発現メカニズム
2.2.3 Imajor?の用途展開
2.2.4 まとめ
2.3 SLICS高輝度プリズムシートの特徴・応用(岡田博司)
2.3.1 はじめに
2.3.2 全反射方式VWBSバックライト
2.3.3 SLICS高輝度プリズムシート
2.3.4 SLICS高輝度プリズムシートの応用例
2.4 3Dディスプレイ用光学材料(深石 圭)
2.4.1 はじめに
2.4.2 Xpol
2.4.3 Xpolを用いた3Dディスプレイの原理
2.4.4 Xpolを用いた3Dディスプレイの特徴
2.4.5 おわりに
2.5 光学機能フィルムのための光弾性測定(田實佳郎,築地光雄)
2.5.1 はじめに
2.5.2 光弾性
2.5.3 光学フィルムの光弾性定数の測定
2.5.4 物理定数としての光弾性定数測定システム
2.5.5 高分子フィルムの光弾性測定
2.5.6 まとめ
3 LED封止材
3.1 LED用シリコーン材料と封止プロセス(尼子雅章)
3.1.1 はじめに
3.1.2 LED封止用シリコーン材料
3.1.3 LEDの一括封止・レンズ成型
3.1.4 シリコーンダイボンド材
3.1.5 おわりに
3.2 シルセスキオキサン系樹脂を用いたLED封止材の開発(植月洋平)
3.2.1 はじめに
3.2.2 透明エポキシ樹脂と安定化剤
3.2.3 シルセスキオキサン系樹脂を用いたLED素子封止材
3.2.4 おわりに
4 コレステリック液晶マイクロレーザー
4.1 コレステリック液晶レーザー発振(竹添秀男)
4.1.1 コレステリック液晶の光学的性質
4.1.2 コレステリック液晶レーザーの種類
4.1.3 コレステリック液晶レーザーの特徴
4.1.4 結言
4.2 液晶レーザーのための超高効率発光色素の開発(小西玄一)
4.2.1 はじめに
4.2.2 共役拡張型ピレン系色素の開発とレージング特性
4.2.3 ストークスシフトの大きな発光色素の開発
4.2.4 全高分子液晶レーザーの試み
4.2.5 おわりに
5 フォトリフラクティブ効果と液晶フォトリフラクティブ材料の開発(佐々木健夫)
5.1 はじめに
5.2 フォトリフラクティブ効果
5.3 液晶材料のフォトリフラクティブ効果
5.3.1 低分子ネマチック液晶および低分子ネマチック液晶/高分子コンポジット
5.3.2 強誘電性液晶のフォトリフラクティブ効果
5.4 おわりに
第6章 新規LCDの表示と光学制御技術
1 ナノ粒子添加FSC-LCD(小林駿介)
1.1 はじめに
1.2 何故,ナノ粒子添加LCDは低電圧動作で高速応答か
1.3 NTN-LCDを用いたFSC-LCD
1.3.1 FSC-LCDの特徴
1.3.2 ディスプレイの明るさと消費電力とを同時に示す指標,cd/W
1.4 結論
2 PSS-LCD方式(望月昭宏)
2.1 はじめに
2.2 PSS-LCD表示方式とは
2.3 PSS-LCD の用途開発
2.4 まとめ
3 RGB独立補償方式によるカラーシフトのないIn-Cell VA-LCDの開発(網盛一郎)
3.1 はじめに
3.2 RGB独立補償方式と光誘起型二軸性コレステリック液晶
3.2.1 視野角補償の原理
3.2.2 RGB独立補償方式の課題
3.2.3 光誘起型二軸性コレステリック液晶
3.3 RGB独立補償方式によるカラーシフト改良効果
3.4 まとめ
第7章 電子ペーパー
1 電子ペーパー「QR-LPD(R)」(増田善友)
1.1 電子粉流体を用いた電子ペーパー
1.1.1 電子粉流体
1.1.2 パネル構造と表示のしくみ
1.1.3 パネル特性
1.2 カラー化への取り組み
1.3 フレキシブル化への取り組み
1.3.1 実用的なパネル設計
1.3.2 実用的な製法
1.3.3 試作したカラーフレキシブル電子ペーパー
1.4 今後取り組むべき技術開発
1.4.1 電極材料
1.4.2 パネル試作
2 カラー電子ペーパー用電気化学表示素子(小林範久)
2.1 はじめに
2.2 エレクトロクロミズム(EC)の特徴と応用展開
2.3 電子ペーパーを目的とした電解析出型エレクトロクロミック素子
2.4 省エネ型カラー電子ペーパーに向けた開発動向
2.5 おわりに
3 フルカラー電子ペーパーのための高分子微粒子設計(川口正剛,武田 力,鳴海 敦)
3.1 はじめに
3.2 電気泳動表示方式を用いた電子ペーパー
3.3 マイクロカプセル化電気泳動電子ペーパーに用いる機能性微粒子の設計
3.3.1 非極性媒体中での高屈折率高分子微粒子の設計
3.3.2 微粒子の帯電制御法
3.3.3 TiO2内包ハイブリッド微粒子の合成
3.4 フルカラー電子ペーパーに向けた微粒子設計
【光記録編】
第8章 大容量光メモリ
1 ベクトル波情報記録方式の考案(茨田大輔)
1.1 はじめに
1.2 偏光感受性記録媒体
1.3 直交直線偏光ホログラフィ
1.4 偏光ホログラムの多重記録
1.5 直交円偏光ホログラフィ
1.6 リターダグラフィ
1.7 おわりに
2 ホログラムメモリ用フォトポリマーの開発(福田隆史)
2.1 はじめに
2.2 ホログラム記録媒体としてのフォトポリマー
2.2.1 記録原理(体積ホログラム)
2.2.2 一般的な材料構成
2.3 求められる特性
2.3.1 多重記録性
2.3.2 感度
2.3.3 重合における体積変化
2.3.4 光散乱
2.3.5 保存安定性
2.4 記録特性評価方法
2.4.1 平面波テスター
2.4.2 ページテスター
2.5 おわりに
3 コリニアホログラフィックメモリー(志村 努)
3.1 はじめに
3.2 コリニアホログラフィックメモリーの構成
3.3 多重記録
3.4 記録媒体に要求される性能
3.5 まとめ
4 3次元ホログラフィックメモリの波面制御(池田順一)
4.1 はじめに
4.2 ナノゲルフォトポリマーの開発
4.3 まとめ
【太陽電池編】
第9章 太陽光発電とフォトニクスポリマー
1 有機薄膜太陽電池の効率化動向と展望(尾﨑雅則,藤井彰彦)
1.1 はじめに
1.2 有機薄膜太陽電池の原理と構造
1.3 有機薄膜太陽電池の高効率化
1.4 自己組織的相互浸透型構造の形成
1.5 液晶性を活用した塗布形成低分子バルクヘテロ型太陽電池
1.6 まとめ
2 薄膜シリコン太陽電池の開発動向と今後の展開(太和田善久)
2.1 はじめに
2.2 アモルファスSi太陽電池
2.3 薄膜多結晶Si,a-Si/薄膜poy-Si太陽電池
2.4 他の薄膜太陽電池との競合動向
3 ホットキャリアを利用した超高効率太陽電池(太野垣健)
3.1 はじめに
3.2 太陽エネルギー変換における物理的限界
3.3 タンデム型・中間バンド型太陽電池
3.4 マルチエキシトン型
3.5 ホットキャリア型太陽電池
3.6 まとめ
4 集光型太陽熱発電の動向と展望(福田光弘)
4.1 はじめに
4.2 集光型太陽熱発電(CSP)とは
4.3 CSPの各種方式
4.4 CSPの展開動向