レポート概要
撹拌を極める・・・!
★非ニュートン流体/異粘度流体の撹拌や、新規開発された撹拌翼についての章を追加!前作からさらにカラー図表を増やし分かりやすくなりました
【本書のポイント】
本書の構成は旧版と基本的に変えず、改訂増補版出版以降に筆者らが新たに開発した撹拌翼やメーカーが開発した撹拌翼を加筆した。また、発行からかなり時間が経過しているが今でも好評につき増刷(第4刷) されている化学工学会監修:「ミキシング技術の基礎と応用」、三恵社(2008)と内容が重複しないようにというスタイルも踏襲した。
名古屋工業大学名誉教授山田幾穂先生の研究に対する「迅速に(Speedy)、安定に(Stable)、簡明に(Simple)」という3S の考えは蒸留シミュレーションや新しい攪拌機の開発にもマッチするだけでなくあらゆる物事の考え方の基本になるものである。筆者はバドミントンを40年プレーし、その後は硬式野球部のノッカーおよび運営に関わっているが、つねに機会をうかがい、ここだと思ったらその機を確実につかむよう常に準備を怠らないことが重要だと再認識した次第である。
(第3版 序より)
●初学者がぶち当たるミキシングにおける壁「計算」をマスター
⇒項目ごとに例題を収載した必携の一冊
【例題】内径2mのジャケット付き円筒槽に、内径と同じ深さに20℃の水を入れ、
翼径0.8m、翼幅0.13mの6枚羽根タービン翼を上下2段に取り付けて、60rpmで
撹拌している。ジャケット側に加熱用温水を通した場合の伝熱速度を求めよ。
ただし、槽壁温度は50℃とし、ジャケットの伝熱面積は12m2とする
●複雑な計算式を詳細に解説!!
・2枚羽根パドル翼に対する永田の式/パドル翼に対する亀井・平岡らの式/
・傾斜パドル翼に対する平岡・亀井らの式
・プロペラ翼、ファウドラー翼に対する式/ヘリカルリボン翼に対する式
・アンカー翼に対する式/乱流撹拌槽における混合時間の推算式
⇒邪魔版あり撹拌槽の動力相関式/大型翼動力相関式
⇒幾何形状撹拌槽の動力関数(平底/皿底/角型/電熱コイル付/ドラフトチューブ付/偏芯)槽
●層流撹拌で重要な流脈の解説
・大型翼の流脈
(マックスブレンド/フルゾーン/スーパーミックスMR205型/マックスブレンドR型)
・ホームベース(HB)翼の流脈/幾何形状の最適化/他の翼形状との比較/スケールアップ&ダウン等の実用化について
・その他大型翼の流脈(サンメラー/ベンドリーフ)/乱流域の流脈
●各種実験法を整理紹介!!
・撹拌所要動力(①軸トルク測定法②消費電力測定法③温度測定法)
・循環時間分布・フローパターン・混合過程の可視化、混合時間
・物質移動係数・固液間物質移動係数
・気液間物質移動容量係数(①ダイナミック法、カラーチェンジ法)
・2次元解析による撹拌翼の流脈パターン可視化、既存設備で迅速に流脈パターンを得るアプローチ
●異相系の撹拌の計算紹介!!
・ガス吹き込み時の撹拌所要動力/ガス吹き込み時の物質移動容量係数
⇒大型リングスパージャー/コンケーブタービン
・固液系での撹拌所要動力/固液撹拌での粒子浮遊限界限度/
・液液系での撹所要動力/Sauter平均液滴径
●非ニュートン流体/異粘度流体の撹拌
・混合が困難な塑性流体の流脈パターン、どのような操作条件が有効か?
・粘度が異なる流体の混合、混合性能向上に向けた開発と実験結果
レポート詳細
執筆者一覧(敬称略)
名古屋工業大学 教授 博士(工学) 加藤 禎人 先生
1988年東レ株式会社入社後、炭素繊維の生産技術開発に携わる。
1991年名古屋工業大学応用化学科の助手となり、現在まで撹拌槽全般の研究に関わる。その間、揺動撹拌槽に関する実験的研究というテーマにおいて九州大学で学位を取得。
2001年助教授となり、すぐに1年間ドイツアーヘン工科大学(現RWTHアーヘン大学)に留学し、バイオリアクター研究に従事した。1992年から、化学工学会ミキシング技術特別研究会(現(公社)化学工学会粒子・流体プロセス部会ミキシング技術分科会)の幹事、2006年から、4年間同分科会の副会長兼庶務幹事を務め、2012年に教授となり2014年から2年間同分科会会長を務め、現在に至る。
目次
第1章 撹拌の目的と撹拌槽の構造
1.撹拌の目的
2.撹拌槽の構成
3.撹拌翼の種類
4.大型翼について
5.撹拌に使用される主な無次元数
第2章 乱流撹拌における撹拌所要動力の重要性
1.撹拌所要動力から推定できること
2.撹拌翼を使用しない撹拌方式もふくめた撹拌性能の評価方法
第3章 層流撹拌における流脈の重要性
1.流脈とは
2.流脈の可視化に基づく層流撹拌槽の混合性能評価方法
3.各種大型翼の流脈
3.2 フルゾーン
3.3 スーパーミックスMR205
3.4 マックスブレンドR 型
3.5 撹拌レイノルズ数
3.6 翼上端から液面までの距離の影響
4.流脈の可視化に基づくホームベース(HB) 翼の開発
4.1 HB 翼の流脈
4.2 HB 翼の幾何形状の最適化
4.3 他の翼形状との比較
4.4 撹拌レイノルズ数の限界
4.5 液深の影響
4.6 数値解析による速度分布と圧力分布
4.7 HB 翼の実用化( スケールアップ・ダウン、グラスライニング)
5.今まであまり紹介されていない大型翼の流脈
5.1 サンメラー
5.2 ベンドリーフ
6.乱流域の流脈
第4章 流動特性
1.層流と乱流および放射流と軸流
2.旋回流速度分布と固体的回転半径
3.中心部液面低下と槽壁部液面上昇
4.循環流量と吐出流量
5.循環時間分布
6.計算例
第5章 動力特性
1.撹拌レイノルズ数と動力の関係
2.邪魔板無し撹拌槽の動力相関式
2.1 2 枚羽根パドル翼に対する永田の式
2.2 パドル翼に対する亀井・平岡らの式
2.3 傾斜パドル翼に対する平岡・亀井らの式
2.4 プロペラ翼、ファウドラー翼に対する式
2.5 ヘリカルリボン翼に対する式
2.6 アンカー翼に対する式
3.邪魔板あり撹拌槽の動力相関式
3.1 完全邪魔板条件
3.2 最高撹拌所要動力
3.3 種々の邪魔板条件での撹拌所要動力
3.4 ディスパー翼の撹拌所要動力
4.各種大型翼の動力相関式
4.1 平底槽の動力相関式
4.2 皿底槽の動力相関式
5.種々の幾何形状の撹拌槽の動力相関式
5.1 角型槽
5.2 伝熱コイルを備えた槽
5.3 ドラフトチューブを備えた槽
5.4 偏芯された槽
5.5 翼板の厚さの影響
5.5.1 パドル翼
5.5.2 傾斜パドル翼
6.計算例
第6章 混合特性
1.混合時間とは
2.典型的な混合パターン
2.1 層流の場合の混合パターン
2.2 動力線図と混合パターンの関係
2.2.1 ディスクタービン
2.2.2 プロペラ
2.2.3 動力数と混合過程の関係
3.混合時間の推算式
3.1 乱流撹拌槽における混合時間の推算式
3.2 高粘度流体の混合時間の推算式
4.大型翼の混合パターン
5.角槽の混合パターン
6.非ニュートン流体の混合パターン
7.液高さが高い場合の多段翼の混合パターン
8.計算例
第7章 伝熱特性
1.撹拌槽の伝熱方式
2.撹拌槽壁伝熱係数
3.伝熱コイル表面の伝熱係数相関式
4.計算例
第8章 異相系の撹拌
1.気液系の撹拌
1.1 ガス吹き込み時の撹拌所要動力
1.2 ガス吹き込み時の物質移動容量係数
1.3 大型リングスパージャー
1.4 コンケーブタービン
2.固液系の撹拌
2.1 固液系での撹拌所要動力
2.2 固液撹拌での粒子浮遊限界速度
3.液液系の撹拌
3.1 液液系での撹拌所要動力
3.2 Sauter 平均液滴径
4.計算例
第9章 スケールアップ
1.スケールアップにおける影響因子
1.1 力学的スケールアップ
1.2 主なスケールアップの要因
2.具体的なスケールアップ則と採るべきデータ
2.1 単位体積当たりの所要動力一定
2.2 混合時間一定
2.3 翼先端速度一定
2.4 単位体積当たり伝熱量一定
2.5 懸濁粒子浮遊条件一定
3.計算例
第10章 各種実験方法
1.撹拌所要動力の測定方法
1.1 測定方法の種類
1.2 動力曲線を作成する時の注意
2.循環時間分布の測定方法
3.フローパターンの測定方法
4.混合過程の可視化および混合時間の測定方法
4.1 脱色法
4.2 電気伝導度法
5.物質移動係数( 壁面伝熱係数) の測定方法
6.固液間物質移動係数の測定方法
6.1 物質移動のモデル
6.2 実験方法
7.気液間物質移動容量係数の測定方法
7.1 実験方法
7.2 酸素濃度計を使用する場合の取り扱い
7.3 ダイナミック法の実験手法
7.4 カラーチェンジ法
8.流脈の可視化法
第11章 流動数値解析
1.流動数値解析の検証
2.パドル翼付き層流撹拌槽の計算プログラム例
3.大型翼の層流撹拌流動解析結果
4.2次元解析による流脈解析結果
第12章 実機と実験装置における撹拌所要動力の差異
1.皿底槽(実機) と平底槽(実験機) の違い
2.検討した系
3.乱流域での翼取り付け位置に対する動力の差異
3.1 パドル翼
3.2 ラシュトンタービン翼
3.3 ピッチドパドル翼
3.4 プロペラ翼
4.遷移域から層流域での動力の差異
第13章 非定常撹拌操作
1.非定常撹拌とは
2.層流における非定常撹拌
2.1 翼の断続的な運転
2.2 翼の回転方向の変動
2.3 翼の上下移動
2.4 翼の回転方向の変動と上下移動の組み合わせ
2.5 非対称な撹拌翼の効果
3.乱流における非定常撹拌
3.1 乱流に対する非定常撹拌の意義
3.2 定常撹拌と非定常撹拌の比較
3.3 断続運転と正逆運転の差
3.4 トルク変動特性
3.5 動力による混合性能評価
第14章 揺動撹拌操作
1.揺動撹拌研究の歴史
2.旋回揺動撹拌
2.1 混合限界回転数
2.2 整流棒の効果
3.往復揺動撹拌
3.1 往復揺動における混合限界回転数
3.2 往復揺動に邪魔板を設置した場合
第15章 非ニュートン流体および異粘度流体の撹拌
1.非ニュートン流体の撹拌
1.1 マックスブレンド
1.2 フルゾーン
1.3 スーパーミックスMR205
1.4 ホームベース翼
1.5 ベンドリーフ翼
1.6 槽回転型アンカー翼
2.異粘度流体の撹拌
第16章 新規開発された撹拌翼
1.AM 翼
1.1 開発経緯
1.2 検討結果と最適形状
1.3 動力相関
2.スーパーミックスシリーズ
2.1 HR320 とHR320S
2.2 HRX300
2.3 GD220
2.4 LR500
おわりに