アミノ酸は、生体内ではタンパク質の構成成分となっているが、その機能を利用した多様な用途の商品開発が行われてきた。アミノ酸の利用価値を大きく分けると、呈味成分、栄養成分、薬理機能、反応性の利用などがある。
一方、アミノ酸がつながった状態の物質であるペプチドは、タンパク質中では不活性だが、消化管での消化の過程で独自の生理活性機能を発揮するものがある。これが機能性ペプチドである。生体内に入ったペプチドはタンパク質に比べ消化吸収のピードが速く、スムーズに栄養を吸収できる。
ペプチドの持つ機能には、血圧調節、ミネラル吸収促進、コレステロール調節、免疫調節、など多彩なものがある。トクホの品目のうち、ペプチドを関与成分とする品目は18%近くを占めている。
ところで、アミノ酸は、体タンパク質や酵素などのタンパク質の合成素材として利用されるだけでなく、多くの生理活性物質の素材としても利用される。アミノ酸の一部が変化して生理作用を発揮するものや、アミノ酸が幾つか結合したペプチドとして機能するものがある。生体内の代謝を司る多くの酵素もアミノ酸からなるポリペプチドであり、成長ホルモンやインスリンなどもアミノ酸から合成される。また、セロトニンなど体内で脳内神経伝達物質に変化するものある。
本書は、これら機能性アミノ酸、機能性ペプチドについて、最先端でご活躍中の先生方にご執筆いただくとともに最新の応用製品や需要などの市場動向を解説した。
本書が機能性アミノ酸・ペプチド、ひいては日本の食品産業の発展に貢献できれば幸いです。
目次
【技術編】
第1章 アミノ酸の機能 加藤久典
1 はじめに
2 アミノ酸の化学と種類
2.1 アミノ酸の構造
2.2 タンパク質の翻訳に使われるアミノ酸
2.3 タンパク質の翻訳に使われないアミノ酸
2.4 アミノ酸様物質
3 アミノ酸機能の多様性
4 呈味物質としてのアミノ酸
5 アミノ酸の生体調節機能
第2章 アミノ酸系スポーツサプリメントの作用―アミノ酸やたんぱく質による筋肉たんぱく質の合成促進― 村上太郎
1 はじめに
2 アミノ酸による筋肉たんぱく質合成の促進
3 運動による筋肉たんぱく質合成の促進
4 レジスタンス運動とアミノ酸による筋肉たんぱく質合成の促進
5 筋肉たんぱく質の合成を促すためのアミノ酸やたんぱく質の摂取タイミング
6 加齢がアミノ酸や運動による筋肉たんぱく質の合成に及ぼす影響
7 性差がアミノ酸や運動による筋肉たんぱく質の合成に及ぼす影響
8 おわりに
第3章 機能性アミノ酸・ペプチド―神経伝達物質としてのアミノ酸― 山田貴史,横越英彦
1 はじめに
2 神経伝達物質(neurotransmitter)とは
3 グルタミン酸・アスパラギン酸
4 GABA・グリシン・タウリン
5 セリン
6 トリプトファン(セロトニン)
7 チロシン:カテコールアミン
8 ヒスチジン(ヒスタミン)
第4章 抗疲労物質としてのアミノ酸―L-オルニチンの抗疲労効果― 西村明仁
1 はじめに
2 L-オルニチンとは
3 L-オルニチンと肝臓
3.1 肝臓保護の重要性
3.2 L-オルニチンの肝保護効果
4 L-オルニチンの疲労感軽減作用
4.1 L-オルニチンのアルコール性疲労抑制効果
4.2 L-オルニチンの抗疲労効果
4.3 L-オルニチンによる運動疲労抑制効果
5 おわりに
第5章 アミノ酸系化粧品 大倉冬美恵,瀧野嘉延
1 はじめに
2 皮膚におけるアミノ酸
2.1 アミノ酸の保湿効果
2.2 アミノ酸による抗糖化・抗カルボニル化
3 湿潤剤―グルタミン酸―
4 アニオン界面活性剤―グルタミン酸・アラニン・グリシン―
4.1 ラウロイルグルタミン酸Naの細胞毒性評価
4.2 ココイルグルタミン酸Naの角層水分量への影響
4.3 ラウロイルグルタミン酸Naの生分解性
5 機能性粉体―リジン―
6 ゲル化剤―グルタミン酸―
7 エモリエント剤―グルタミン酸・グリシン・アラニン―
7.1 ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)による荒れ肌回復効果
8 アンチエイジング―グルタミン酸―
8.1 PCA亜鉛によるコラーゲン分解抑制効果
8.2 PCA亜鉛によるコラーゲン産生促進効果
9 おわりに
第6章 機能性ペプチド 有原圭三,大畑素子
1 はじめに
2 ペプチドの科学
2.1 ペプチドの化学
2.2 ペプチドの生物学
3 食品と機能性ペプチド
3.1 食品タンパク質からのペプチド生成
3.2 ペプチドの保健的機能
3.3 ペプチドを利用した食品
4 化粧品と機能性ペプチド
4.1 化粧品におけるペプチド利用
4.2 化粧品で期待されるペプチドの働き
5 ペットフードと機能性ペプチド
5.1 ペットフードにおけるペプチド利用
5.2 ペットフードで期待されるペプチドの働き
6 おわりに
第7章 血圧降下ペプチド 齋藤忠夫
1 はじめに
2 血圧調節のメカニズムとアンジオテンシンI変換酵素(ACE)
3 ペプチドのin vitro およびin vivo アッセイ
4 特定保健用食品(トクホ)と血圧降下ペプチド
5 乳タンパク質由来の血圧降下ペプチド
6 血圧降下ペプチドの化学構造と活性の関連性
7 血圧降下ペプチドの薬剤に対する優位性
8 血圧降下ペプチドの将来研究
9 おわりに
第8章 抗酸化ペプチド 村本光二
1 はじめに
2 なぜペプチドの抗酸化活性はタンパク質よりも強いのか
3 抗酸化活性の測定
4 抗酸化ペプチドの構造と活性の相関
5 抗酸化ペプチドの多機能性
6 抗酸化ペプチドの応用
第9章 コレステロール代謝改善アミノ酸・ペプチド 水道裕久
1 はじめに
2 コレステロール代謝改善アミノ酸
2.1 含硫アミノ酸
2.2 含硫アミノ酸類似物質
2.3 その他のアミノ酸
3 コレステロール代謝改善ペプチド
3.1 大豆由来ペプチド
3.1.1 大豆タンパク質のペプシン分解物高分子画分
3.1.2 リン脂質結合大豆ペプチド
3.1.3 グリシニン由来ペプチド
3.1.4 β-コングリシニン由来ペプチド
3.2 乳由来ペプチド
3.3 豚肉由来ペプチド
3.4 魚由来ペプチド
4 アミノ酸・ペプチドを関与成分とする特定保健用食品
4.1 ブロッコリー・キャベツ由来のSMCS(天然アミノ酸)を関与成分とするもの
4.2 リン脂質結合大豆ペプチド(CSPHP)を関与成分とするもの
5 おわりに
【市場編】
第10章 アミノ酸とアミノ酸類縁体 シーエムシー出版編集部
1 アミノ酸と類縁体の市場動向
1.1 呈味成分
1.2 栄養成分
1.3 薬理機能
1.4 反応性の利用
2 L-アスパラギン酸(L-Aspartic acid)
3 L-アルギニン(L-Arginine)
4 L-グルタミン酸ナトリウム(Monosodium L-glutamate)
5 L-シスチン(L-Cystine)
6 L-セリン(L-Serine)
7 L-チロシン(L-Tyrosine)
8 グリシン(Glycine)
9 L-アラニン(L-Alanine)
10 L-ヒスチジン(L-Histidine)
11 L-イソロイシン(L-Isoleucine)
12 L-リジン塩酸塩(L-Lysine Hydrochloride)
13 DL-メチオニン(DL-Methionine)
14 L-スレオニン(L-Threonine)
15 L-オルニチン塩酸塩(L-Ornithine Hydrochloride)
16 L-シトルリン(L-Citrulline)
17 γ-アミノ酪酸(γ-Aminobutyric Acid)
18 ε-アミノカプロン酸(ε-Aminocaproic Acid)
19 5-アミノレブリン酸(5-Aminolevulinic Acid)
第11章 ペプチド シーエムシー出版編集部
1 機能から見たペプチドと市場
1.1 血圧調節ペプチド
1.2 ミネラル(カルシウム)吸収促進・むし歯予防ペプチド
1.3 中性脂肪調節ペプチド
1.4 コレステロール調節ペプチド
1.5 抗酸化ペプチド(イミダゾールジペプチド)
2 コラーゲンペプチド(Collagen Peptide)
3 乳タンパク質由来のペプチド
4 ラクトトリペプチド(Lactotripeptide)
5 カゼインホスホペプチド(Casein Phosphopeptide:CPP)
6 ナイシン(Nisin)
7 海産物由来ペプチド
8 サーデンペプチド(Sardine Peptide)
9 カツオ節ペプチド(Dried Bonito Peptide)
10 ワカメペプチド(Wakame Peptide)
11 海苔ペプチド(Laver Peptide)
12 クラゲペプチド(Medusa Peptide)
13 農産物由来ペプチド
14 大豆ペプチド(Soybean Peptide)
15 リン脂質結合大豆ペプチド(Soy peptide with bound Phospholipids)
16 ゴマペプチド(Sesame Peptide)
17 小麦ペプチド(Wheat Peptide)
18 米ペプチド(Rice Peptide)
19 卵ペプチド(Egg Peptide)
20 ローヤルゼリーペプチド(Royal jelly Peptide)
21 γ-ポリグルタミン酸(γ-Polyglutamic Acid)
22 グルタチオン(Glutathione)
23 グリシルグリシン(Glycylglycine)
24 アシル化ペプチド(Acyl Peptide)
25 アラニルグルタミン(L-Alanyl-L-Glutamine)