レポートナンバー 0000014847
人工細胞の創製とその応用
株式会社シーエムシー出版
Promising Construction and Applications of Artificial Smart-Cells
発刊日
2017/01/31
言語日本語
体裁B5/215ページ
ライセンス/価格215ページ
0000014847
ポイント
無細胞タンパク質合成系、人工膜、ゲノム合成など「人工細胞」創製とその応用をまとめた一冊!
生命機能を人工的に再構成することにより「生命」を理解する!
医薬応用、高機能品生産、培養モデルなどへの展開に迫る!
レポート概要
【 刊行にあたって 】
2010年代に入り、生命や生物現象の分子解析において、ゲノム配列解読のスピードが急上昇し、既読量は膨大化しつつある。ゲノム解析技術の進歩は、半導体などの飛躍的な機能向上によるコンピュータの性能や記憶容量の高度化による多くの機器分析の進化とシンクロしており、今後、AIの導入によりさらに加速するものと思われる。生命の基本的なゲノムDNAは、「その配列は解析済」をベースにして、RNA、タンパク質や代謝物、それぞれの分子の世界の定性分析と定量分析が研究の中核になり、さらに、この分析に、「時」系列という要素、いわゆる、「時間」という要素も加味した解析が加わる。これまでの筆者の企画編集してきた刊行シリーズで生命を構成するこれらの分子を網羅的に解析する、いわゆるゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、メタボロミクスは、個々に進んできたが、「時間」という要素を加味した「トランスオミクス」によるシングルセル解析の時代を迎えつつある。さらに、ゲノム編集技術なども可能になり、ライブ・イメージング、エピジェネティック解析、インターラクトーム解析やマイクロRNA解析も加わり、集積データは膨大になり、統計数理解析を伴う「ビッグデータ」の解析が必須になってきた。
生体内分子を網羅的に解析するオミクス解析の進展は、生命現象を多角的に解析して応用してバイオ燃料や化成品などの有用物質を生産する研究などへも展開しつつある。これまでの筆者の刊行シリーズで紹介してきたように、代謝を創造したり構築したりする「合成生物工学」の発展も期待されている。
「時間」という要素の取り込みにより生命の「動態」研究へのシフトが一段と進むと考えられるが、そうすると、これまで漠然としてとらえどころのなかった研究への挑戦が創出されてくる。本著書の趣旨である「人工細胞創製」は、まさに、これらの研究の一つであり、「必然」でもある。上記のような基盤研究をもとにして、生体分子や生命システムを「人工的に創り出す」作業を通じて生命を理解し,新しいテクノロジーを誘発しようとする人工細胞設計の研究が本格化してきている。本著で紹介しているように、それらのもとになる各種要素技術の開発と確立も精力的に進んでおり、それぞれの要素は新しい技術や発明につながりつつある。
本企画では,生物が有する様々な機能を解明し,これを人工的に再構成した人工細胞を用いて,生命の基礎解析への展開とならんで応用展開もめざして進みつつある研究の現況をまとめる。
京都大学 大学院農学研究科
植田充美
レポート詳細
著者一覧
植田充美 |
京都大学 |
網藏和晃 |
東京大学 |
上田卓也 |
東京大学 |
安達仁朗 |
(国研)理化学研究所 |
清水義宏 |
(国研)理化学研究所 |
金森崇 |
ジーンフロンティア(株) |
重田友明 |
兵庫県立大学 |
町田幸大 |
兵庫県立大学 |
今高寛晃 |
兵庫県立大学 |
芳坂貴弘 |
北陸先端科学技術大学院大学 |
岡野太治 |
中央大学 |
鈴木宏明 |
中央大学 |
車兪澈 |
東京工業大学 |
佐々木善浩 |
京都大学 |
秋吉一成 |
京都大学 |
下林俊典 |
(国研)海洋研究開発機構 |
濵田勉 |
北陸先端科学技術大学院大学 |
瀧ノ上正浩 |
東京工業大学 |
吉田昭太郎 |
東京大学 |
神谷厚輝 |
(公財)神奈川科学技術アカデミー |
竹内昌治 |
東京大学 |
下川直史 |
北陸先端科学技術大学院大学 |
高木昌宏 |
北陸先端科学技術大学院大学 |
古村崚 |
京都大学 |
青木航 |
京都大学 |
市橋伯一 |
大阪大学 |
庄田耕一郎 |
東京大学 |
陶山明 |
東京大学 |
藤原慶 |
慶應義塾大学 |
森泉芳樹 |
東京大学 |
田端和仁 |
東京大学 |
木賀大介 |
早稲田大学 |
黒田知宏 |
東京大学 |
後藤佑樹 |
東京大学 |
菅裕明 |
東京大学 |
末次正幸 |
立教大学 |
平尾一郎 |
Institute of Bioengineering and Nanotechnology(IBN) |
木本路子 |
Institute of Bioengineering and Nanotechnology(IBN) |
玉井美保 |
北海道大学 |
田川陽一 |
東京工業大学 |
黒田浩一 |
京都大学 |
目次
第1章 タンパク質合成技術
1 無細胞タンパク質合成系による生命システムの再構成
1.1 はじめに
1.2 無細胞タンパク質合成系
1.3 再構成型無細胞タンパク質合成系 PURE system
1.4 合成生物学とPURE system
1.5 まとめ
2 人工細胞と無細胞タンパク質合成システム
2.1 はじめに
2.2 タンパク質合成システムの構成要素
2.3 生命の定義と生命の再構築へむけた試み
2.4 恒常性の維持
2.4.1 限外ろ過膜や透析膜を用いる方法
2.4.2 マイクロ流路を用いる方法
2.4.3 脂質膜を用いる方法
2.5 進化の実装
2.6 自己組織化
2.7 おわりに
3 再構成型無細胞タンパク質合成系の有用性
3.1 はじめに
3.2 無細胞タンパク質合成系の概要
3.3 再構成型無細胞タンパク質合成系を用いた活性型タンパク質の合成
3.4 無細胞タンパク質合成系の応用
3.4.1 非天然型アミノ酸を含むタンパク質の合成
3.4.2 in vitroディスプレイ
3.5 おわりに
4 ヒト完全再構成型タンパク質合成システム
4.1 はじめに
4.2 C-型肝炎ウイルス(HCV)-IRES(Internal Ribosome Entry Site)依存性システム
4.3 シャペロンを添加したHCV-IRES依存性システム
4.4 脳心筋炎ウイルス(EMCV)-IRES依存性システム
4.5 ヒト完全再構成型タンパク質合成システム
4.6 まとめ
5 非天然アミノ酸の導入
5.1 はじめに
5.2 無細胞翻訳系を用いた非天然アミノ酸の導入
5.3 細胞内での非天然アミノ酸の導入
5.4 直交型リボソームによる非天然アミノ酸の導入
5.5 非天然アミノ酸の導入によるタンパク質の人工機能化
5.6 おわりに
第2章 人工膜創製技術
1 人工細胞の容器としてのリポソーム
1.1 はじめに
1.2 人工細胞膜としてのリポソーム作製法
1.3 細胞の成長と分裂を模擬した膜ダイナミクス
1.4 動的な膜特性を活用した人工細胞リアクタ
1.5 おわりに
2 無細胞タンパク質合成系とベシクルによる人工細胞の構築
2.1 はじめに
2.2 人工細胞構築のためのアプローチ
2.3 自己複製の創発
2.4 膜タンパク質による膜の機能化
2.5 おわりに
3 リポソームによる人工細胞の創製
3.1 はじめに
3.2 膜モルフォジェネシス
3.3 ハイブリッドリポソーム
3.4 人工細胞としてのプロテオリポソーム
3.5 おわりに
4 ベシクルの複合化による人工細胞構築の新展開
4.1 はじめに
4.2 組成が非対称な多成分リポソームから紐解く脂質ラフトの形成メカニズム
4.3 細胞接着を模倣する再構成システムの開発
4.4 細胞サイズ膜小胞内の分子システムが受ける物理的効果
4.5 まとめ
5 バイオソフトマターの物理工学に基づく非平衡開放系の人工細胞の構築と制御
5.1 はじめに
5.2 非平衡開放系の人工細胞の現状
5.3 マイクロ流路によるコンピュータ制御型の人工細胞
5.4 DNAナノ構造による人工細胞
5.5 おわりに
6 マイクロ・ナノデバイスによる膜系システムの理解
6.1 はじめに
6.2 液滴接触法による平面脂質二重膜作製とイオンチャネル計測
6.3 マイクロ流路中における流体のせん断力を利用した脂質二重膜形成方法
6.4 マイクロデバイスによるリポソームの作製
6.5 結論
7 膜弱秩序構造のダイナミクス
7.1 はじめに
7.2 二次元マイクロエマルション:ラインアクタント
7.3 静電相互作用を伴う相分離
7.4 静電相互作用による膜の自発的変形
7.5 まとめ
第3章 人工細胞創製
1 クレイグ・ベンターの戦略
1.1 はじめに―クレイグ・ベンターの紹介―
1.2 最小ゲノムの構築に向けて
1.3 ゲノムの人工合成技術の確立
1.4 ゲノムの移植技術の確立
1.5 最小ゲノムの構築
1.6 おわりに
2 進化する人工細胞の構築と生命の起源
2.1 序論:生命の初期進化の理解を目指して
2.2 進化するために必要な条件
2.3 第1世代進化システム
2.3.1 第1世代進化システムの限界
2.4 遺伝情報を翻訳することの重要性
2.5 第2世代進化システム
2.5.1 翻訳共役型RNA複製システム
2.5.2 細胞構造による情報分子と機能分子の関連づけ
2.5.3 寄生体の出現
2.5.4 細胞構造による寄生体防御
2.5.5 第2世代進化システムの進化の特徴と限界
2.6 第3世代以降の進化システム
2.7 まとめと展望
3 RNAを転写因子とする人工遺伝子回路の創製
3.1 はじめに
3.2 遺伝子回路
3.3 RNA転写因子
3.4 DNAコンピュータRTRACS
3.5 RTRACSによる人工遺伝子回路
3.6 人工細胞の境界としてのベシクル
3.7 膜タンパク質の導入に適したGUV調製法
3.8 GUVに封入した人工遺伝子回路
3.9 外部シグナルによるGUV内人工遺伝子回路の動作制御
3.10 おわりに
4 無細胞システムによる生命システムの理解
4.1 無細胞システムで生命システムを理解することは可能か?
4.2 濃厚な抽出液を創る
4.3 濃厚な抽出液に欠けているもの
4.4 人工細胞を用いた空間サイズ効果の解明
4.5 人工細胞を用いた脂質膜の化学特性効果の解明
4.6 人工細胞の中に生体並み濃度の抽出液を用意する
4.7 細胞並みに膜タンパク質を持つ人工細胞は創成可能か?
4.8 細胞抽出液は創れるか?
4.9 生命システムの絡み合いを考察する
4.10 物質から細胞を再び創り上げることは可能か?
5 マイクロデバイスを用いた細胞の構成的理解
5.1 はじめに
5.2 「器」に求められる役割
5.3 微細加工技術で器を創る
5.4 フェムトリットルチャンバーと,Arrayed Lipid Bilayer Chambers「ALBiC」
5.5 大腸菌とALBiCを融合させた人工細胞系
5.6 最後に
第4章 展開
1 設計生物学
1.1 はじめに
1.2 指数関数的な技術の発達の前提:数理モデルにより表現される原理と再現性
1.3 原理の数理モデルによる説明が博物学から確立される過程と数理モデル化の限界
1.4 生物学における「モデル」の扱い
1.5 合成生物学の黎明期:天然の系の本質を抽出して単純化した人工遺伝子回路の構築
1.6 人工遺伝子回路の組み合わせによる設計生物学
1.7 人工遺伝子回路toggle switchの拡張1:遺伝子大量発現による多様化のプログラミング
1.8 人工遺伝子回路toggle switchの拡張2:細胞間通信による多様化の設計
1.9 設計生物学の今後と人工細胞の創製
2 遺伝暗号リプログラミングによる人工翻訳系の創製
2.1 はじめに
2.2 遺伝暗号リプログラミング法の概要とその歴史
2.3 人工翻訳系の創製
2.3.1 コドンボックスの人工分割が可能な人工翻訳系
2.3.2 人工デュアルセンスコドンを利用する人工翻訳系
2.3.3 天然とは直交する人工遺伝暗号を利用可能な人工翻訳系
2.4 おわりに
3 ゲノム複製サイクル再構成系とその展望
3.1 人工細胞とゲノム複製
3.2 DNA複製研究における試験管内再構成アプローチ
3.3 ミニ染色体複製再構成系における複製の開始と伸長
3.4 複製終結と環状DNA分離
3.5 複製を何度も繰り返す~複製サイクルの再構成にむけて
3.6 ゲノム複製再構成系の応用利用
4 ボトムアップで細胞を理解する『リバース分子生物学』の提唱
4.1 はじめに
4.2 現代生命科学の方法論
4.3 リバース分子生物学の提唱
4.4 リバース分子生物学の実証
4.5 生命の完全な理解に向けて
5 人工塩基対による遺伝情報の拡張
5.1 はじめに
5.2 第三の塩基対として機能する人工塩基対
5.3 人工塩基対を用いた応用研究
5.3.1 高機能DNAアプタマーの開発
5.3.2 細胞への応用
5.4 おわりに
6 哺乳類生命体培養モデルの創成
6.1 はじめに
6.2 哺乳類の構造
6.3 人工生命培養モデルの構築
6.3.1 人工生命培養モデルを構築するための細胞
6.3.2 肝組織培養モデルを例として
6.3.3 哺乳類生命体培養モデルの装置
6.4 人工生命培養モデルの応用と期待
7 セルファクトリーから真のスマートセル構築に向けて
7.1 はじめに
7.2 セルファクトリーに向けた試み
7.3 細胞内局在化
7.3.1 区画化
7.3.2 足場タンパク質への集積
7.3.3 細胞表層デザイン
7.4 宿主細胞プラットフォーム
7.4.1 酸化還元バランス
7.4.2 ストレス耐性
7.4.3 ゲノム縮小
7.5 スマートセルに向けた新たな技術
7.6 おわりに
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