日本経済は緩やかな回復が続き、実質GDP成長率は増加を示したが、GDP成長率は引き続き低迷している。一方で日本における人口減少や少子高齢化などの人口問題、サーキュラーエコノミーを代表とする環境問題、市場での顧客ニーズの多様化など社会環境が変化しており、技術面では5Gをはじめとする新たな科学技術の動きがある。
経済産業省は、日本企業を取り巻く社会・経済環境の大きな変化に対応しつつ企業競争力を高めていくためには人材育成が急務と考え、「経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会」を発足させた。この研究会の報告書の原則のひとつに「経営戦略を実現する重要な要素として人材および人材戦略を位置づけること」がある。また、ミドルリーダーの計画的育成・支援を方策としてあげている。
一方、企業は新事業開発や新製品開発など に取り組んでいるが、これらをけん引するリーダー格の人材不足が課題となっている。
本書は、イノベーター育成の観点から、ビジネスをプロデュースするための要素をまとめたものであり、人材育成と共にイノベーションに向けた取組に活用されることを願っている。
((公社)高分子学会 常務理事 平坂 雅男 「刊行にあたって」より抜粋)
目次
【当初のポイント】
【時代に求められるイノベーターの条件とは何か?イノベーション戦略とは?】
テーマ創出/市場創出の仕掛けづくり、新規テーマ創出の考え方、技術者マーケティングの重要性
企業における研究テーマ選定とは?誰が行うのか?
【大企業が陥りやすい新事業のジレンマとは?グローバルと戦うために事業の拡大戦略はどうマネジメントするべきか?】
グローバル企業のイノベーションの潮流!既存市場技術による新市場(未踏分野)進出の方策!
事業拡大と並行した研究戦略およびマネジメントの仕組み!
B to B or B to C それともB to B to Cで変わってくる戦略の違いとは?
【イノベーターであれば、どう考え、進めるべきなのか?】
【オープンイノベーション・人材マネジメント・チームビルディング・女性R&D人材のキャリアパスプラン・
知財戦略・基盤人材とリーダー人材の育成】の思考・実践論!
【先のことはわからない?だが、予測することはできる!】
イノベーターがどう予測してイノベーションへとつなげていったのか?
化学・自動車・住宅メーカーに求められるイノーベータ―の役割とは?
序章 企業に求められるイノベーターとその役割
1.イノベーターとは
2.イノベーターの役割
3.人的ネットワークの重要性
4.イノベーターとしての魅力
5.人材育成
コラム1
第1章 テーマ創出/市場創出までの仕掛けづくり
第1節 メーカーが持続的に研究テーマ/市場を創出するための仕掛けづくり
はじめに
1.イノベーションとは
1.1 イノベーションの起源
1.2 イノベーションの概念と技術経営
1.3 イノベーションの定義
2.新規事業開拓の方向性
2.1 新規事業絞り込みのポイント
2.2 アンゾフマトリックス活用によるテーマポジショニング
3.新規テーマ創出の考え方
3.1 商品化の4つの過程
3.2 研究テーマの数の重要性
3.3 新規テーマはいかに持続的に創出するか
3.4 テーマポートフォリオ評価
4.マーケティング
4.1 マーケッターは誰が行うか?
4.2 技術者マーケティングの重要性
4.3 AI時代のデジタルマーケティング
5.ビジネスモデルの重要性
5.1 ビジネスモデル構築の基本的考え方
5.2 ビジネスモデル発想法
おわりに
第2節 イノベーターの条件と新市場創出への仕掛け作り
はじめに
1.イノベーション
1.1 シュンペーターのイノベーション
1.2 イノベーションの原動力
2.未来の社会を予測する
2.1 人工知能(AI)がやれること
2.2 AIが起こすイノベーション
2.3 過去の成功体験は役に立たない
2.4 未来予想図(2040年)
3.イノベーターの条件
3.1 仕事を通して成すべき社会的意義を持っている
3.2 明日への準備ができている(AIによる革新への対応)
3.3 自分のスキルを因数分解して把握している
4.イノベーションへの仕掛け:新市場創出の3つの仕掛け
4.1 新事業概念の創出
4.2 新バリューチェーンネットワークの構築
4.3 オープンイノベーション
おわりに
コラム2
第2章 製品化をにらんだ研究テーマ選定
~製品・事業開発の成否を決定する研究開発テーマの選定法~
はじめに
1.研究テーマ選定時における研究開発マネージャーの悩み
2.企業における研究テーマ選定とは何か?
2.1 研究テーマ選定は誰が行うのか
2.2 研究テーマ選定の前の準備
3.研究テーマ選定の進め方
3.1 研究テーマ選定に「勝利の方程式」は存在するか?
3.2 研究テーマ選定の進め方
3.2.1 保有技術の棚卸し評価と市場性の評価
3.2.2 保有技術の分類と評価
3.2.3 策定した分類区分の予備検証
3.2.4 技術棚卸し作業と解析
3.2.5 研究テーマ計画の立案
3.2.6 研究テーマの選定
3.2.7 技術棚卸しや新規研究テーマ申請の研究技術開発管理制度への組み込み
4.技術の棚卸しの事業経営への効果
終わりに
コラム3
第3章 事業化への道筋
第1節 大企業が陥りやすい新事業のジレンマと新事業化への道程
1.大企業が陥りやすい新事業のジレンマと新事業化への道程
2.起業意識の希薄性と社内起業家
3.新規事業規模
4.事業継続のためのリソースと受け皿
5.大企業のサイロ組織と事業化予算
6.品質
7.NIH症候群
8.大企業組織の中で新事業化を進めるためには
第2節 グローバル企業における事業化プロセスと リーダーの重要性・方向性の示し方
はじめに
1.ポリエステルフィルム 用途開発の歴史
2.事業化プロセスとブランド戦略
3.事業化・製品開発に適した組織
4.戦略的なマーケットに対する組織
5.開発のゲート管理
6.製品開発の実例
6.1 医療用使い捨て飛沫感染防止マスクの開発
6.2 Pre-Concept(テーマ提案
6.3 Concept( ビジネスコンセプト)
6.4 Concept( 技術アセスメント)
6.5 Design・Prototype( マーケティング)
6.6 Design・Prototype( 製品設計)
6.7 Scale-up
6.8 Control Commercialization
おわりに
第3節 日本大企業における新規事業・イノベーションの課題と新アプローチ
はじめに
1.外部環境の変化
2.なぜ大企業から新規事業が生まれ難いのか?
2.1 既存事業と新規事業の位置づけ
2.2 経営・組織・人の問題
3.イノベーティブ企業における新規事業成功要因
4.新規事業を効率的に生み出す新アプローチ
おわりに
コラム4
第4章 事業マネジメントと拡大戦略
第1節 既存市場技術による新市場(未踏分野)進出
はじめに
1.グローバルでのイノベーションの潮流
1.1 イノベーションを発現するために必要なこと
1.2 脳科学の活用
2. イノベーションとマーケッティング
2.1 マーケッティングプロセスとはツール
2.2 技術ベースで新市場を創造していくために
2.3 市場ベースで新市場を創造していくために
2.4 新市場への既存技術・製品の導入
第2節 事業拡大と並行した研究戦略およびマネジメントの仕組み
はじめに
1.研究テーマの設定
1.1 現状の技術、市場の把握
1.2 研究テーマの体系化
1.3 研究テーマの見える化
2.研究テーマの評価
2.1 研究開始前の評価
2.2 研究の継続・中止の判断
3.研究から商品化へ
3.1 研究テーマ進捗の共有
3.2 化粧品における商品化
おわりに
コラム5
第5章 オープンイノベーション
第1節 研究開発と連動したオープンイノベーションの進め方・考え方
はじめに
1.オープンイノベーション普及の背景
2.オープンイノベーションの推進プロセス
2.1 フェーズ1:オープンイノベーション推進チームの組成
2.2 フェーズ2:経営陣の承認獲得と社内マーケティング
2.3 フェーズ3:社外に求める技術を選定する
2.4 フェーズ4:技術探索方法を決定する
2.5 フェーズ5:技術を探索する
2.6 フェーズ6:技術を評価する
2.7 フェーズ7:技術を取り込む
おわりに
第2節 グローバル企業におけるイノベーションに対する発想と進め方、戦略への落とし込み方
~ホンダとサムスンで経験した事例を通じて~
1.ホンダでの定説否定から生まれるイノベーション
2.サムスンでの技術経営とイノベーション創出への布石
3.ホンダとサムスンの経験を活かして
4.技術経営とイノベーション創出における真髄
コラム6
第6章 組織人材マネジメント・チームビルディング
第1節 持続的成長を続ける組織作りと組織の成長を支える人材マネジメン ト戦略
はじめに
1.Our Credo(わが信条)
2.分社分権経営
3.人材戦略
4.革新的技術の発掘と投資(イノベーション)
おわりに
第2節 グローバル企業における女性R&D人材のキャリアパスプラン
はじめに
1.VUCA時代に要求される人材
2.グローバル企業での人材開発の潮流
3.VUCA時代の人材開発プログラムの流れ
4.グローバル企業、スリーエム社での人材開発支援プログラム例
5.女性人材開発支援としてのメンタリング例
第3節 基盤人材によるチームビルディングとリーダーシップを発揮できる人材
はじめに
1.企業の力は人にある
1.1 次世代イノベーターとは
1.2 日本で起業した又は偉業を成し遂げた偉人の言葉
2. 現在の日本がある社会環境及び時代背景
2.1 次世代イノベーターに求められる日本の現状認識
2.2 日本の現状認識を直視する契機
3.企業は何をなすべきか?
3.1 マネジメントの役割
3.2 企業の目的及び機能
4.企業と従業員とはどうあるべきか?
4.1 企業と従業員のエンゲージメント
4.2 企業のあるべき姿
5.人に影響を及ぼすことができる普遍的な要素とは何か?
5.1 感謝・謙虚
5.2 幸福になる夢
5.3 実行力・行動力
5.4 企業に勤める使命感
5.5 自尊・自知・企業に勤める使命感
5.6 自己変革の心構え
5.7 真理の探究
5.8 道徳観・倫理観
5.9 好奇心を失わない若さ
5.10 微笑み
おわりに
コラム7
第7章 知財戦略とイノベーション
はじめに
1.特許
2.知的財産部の役割
3.知財戦略
4.情報共有化
5.イノベーション・パートナーとしての知財スタッフ
6.総合的知財力
コラム8
第8章 先端技術と未来予測
第1節 企業の持続的成長に果たす将来予測とイノベーターの役割
1.イノベーション創出に向けた企業活動成果と課題
2.将来予測法
3.イノベーターの役割
第2節 将来はどう予測するのか~産業界における人材育成としての将来予測~
はじめに
1.予測活動のインセンティブ
1.1 予測活動が必要性になる局面
1.2 2つの予測の方法論と変遷
2.フォーキャスティングの考え方
2.1 集合知
2.2 予測手法と発展
2.3 予測活動の体験・トレーニング
2.4 予測活動の際のポイント
2.5 有効性の限界とその要因
3.バックキャスティングの考え方
3.1 バックキャスティングの思考順序
3.2 オプションと選択
3.3 バックキャスティングの有効性と困難さ
おわりに
第3節 持続可能な住生活に必要な技術とイノベーターへの期待
はじめに
1.日本のエネルギー消費と水の使用量
2.サステナブルデザイン
3.自然に学ぶものづくり
3.1 土の呼吸メカニズムを利用した自律型調湿タイル
3.2 ナノ多孔質セラミックス粒子を用いた真空断熱材
おわりに
第4節 カーテクノロジーの変遷と予測される自動車社会におけるイノベー ターの役割
はじめに
1.自動車技術の発展史
2.エポックを作ったクルマたち
2.1 T型フォード:大量生産技術によって低価格車を大衆に提供
2.2 VWビートル:大衆に乗用車という国策で開発、ドイツの戦後復興に貢献
2.3 MINI:バブルカーに取って代わるミニマムサイズの高性能車
2.4 ホンダ・シビックCVCC(マスキー法を初めてクリアし、注目された)
2.5 トヨタ・プリウス(燃料消費を半分とする目標に対応してハイブリッドシステムを導入)
2.6 BMW・i3(EV専用車両を開発、CFRPの採用でバッテリー搭載量を削減)
3.今日注目されている技術課題
3.1 持続可能性と排出ガス規制
3.2 交通事故対策とぶつからないクルマ
4.今後の課題
4.1 電動化
4.2 自動運転
4.3 材料転換
4.4 研究活動、共同領域と競争領域
5.イノベーションをもたらすもの
第5節 化学業界の技術・市場の変遷と社会とのかかわり方におけるイノ ベーターの役割
はじめに
1.1950年代以降の日本の製造業の事業経営と技術革新
2.企業におけるイノベーションとは?
2.1 日本企業の「イノベーション」認識
2.2 イノベーションの意義付け
2.3 化学企業におけるイノベーション
3.イノベーターの役割
3.1 イノベーションは誰が推進するのか?
3.2 イノベーターに適する人材とは?
3.3 イノベータ?の役割
終わりに
コラム9
第9章 R&Dリーダーのビジネス思考とその傾向(アンケート調査報告)
はじめに
1.イノベーション戦略の現状と研究開発体制について
1.1 どのような研究開発テーマが会社にとって良いと思いますか
1.2 研究開発テーマを選択するにあたってイノベーション戦略はありますか
1.3 上記1-2で「ある」と答えた方のみ、どういった戦略であるかをお答えください
1.4 研究開発テーマ着手の決定は、誰が決定していますか
1.5 研究開発テーマ着手の決定はどのような時期に実施されていますか?
1.6 研究開発テーマ着手の決定プロセスはR&D部門、研究所として決められているものですか
1.7 研究開発テーマは、どこから生まれますか
2.研究開発戦略と事業化について
2.1 研究開発テーマの目標の売上数値はいくらですか
2.2 研究期間としてどれぐらいの期間で事業化を考えていますか
2.3 研究開発テーマは、どのような仕組みでフォローされていますか
2.4 研究開発テーマの撤退、継続などの仕組みはありますか
2.5 研究開発テーマの成果や進捗情報の共有は社内でどのように行われていますか
3.イノベーション戦略の現状と研究開発体制について
3.1 研究開発テーマへのアドバイスは、だれが、いつ、どこで、どのように行われていますか
3.2 研究テーマの深堀をするための手段は何であると考えていますか
3.3 研究所の社内での評価をどのように受け止めていますか
3.4 事業部と顧客訪問の機会がございますか
3.5 研究所内で研究開発テーマの情報共有することは意味があると考えますか
3.6 事業部と研究開発テーマについて話し合うことはございますか
3.7 過去の成功研究開発テーマは何ですか。その成功要因は何と考えていますか
3.8 研究テーマのどの段階で事業部と連携しますか
3.9 研究所の中期計画は、誰が、どの時期から、どのようなプロセスで策定しますか
3.10 研究所と事業部で人の異動はございますか
3.11 経営トップが研究所を訪問することはございますか
3.12 どのステージの研究テーマをCTOや経営トップと共有化していますか
4.アンケート全体のご感想(企業イノベーション戦略についてのお考え・要望)
おわりに
コラム10