本稿では、これまでのイノベーション戦略や競争戦略を振り返り、また、新たな潮流についての認
識を深めた。イノベーションは、これまでの技術の延長線上に解をみつける持続的イノベーションや
新たな技術またはビジネスモデルによる破壊的イノベーションを追求する道など様々である。イノ
ベーションへの道筋は、イノベーションを起こそうとするイノベーターが見出すものである。イノベー
ションに関する参考書はあっても、現在、イノベーターを育成するための参考書は少ない。本書では、
次世代のイノベーター育成のために、事業構想からビジネスでの成功に至るまでに実践の経験知が多
く含まれている。企業でイノベーションを模索する者のみならず、人材育成を考えるスタッフにも各
章が参考になると考えている。そして、新たな時代を導くイノベーターが現れることに期待したい。
目次
序章 企業におけるイノベーション戦略の変遷と最近の動向
はじめに
1. イノベーション論
1.1 イノベーションのジレンマ
1.2 オープンイノベーション003
1.3 デザイン・ドリブン・イノベーション
1.4 イノベーション・マネジメント
2. 競争戦略論
3. 市場戦略
4. 外部環境の認識
4.1 製造業の課題
4.2 環境
4.3 デジタル時代の潮流
5. イノベーターへの期待
おわりに
第1章 研究・事業プロジェクトの立ち上げまでの仕掛けづくり
第1節 本質的な技術価値追求による新市場開拓と新規事業創出の現場づくり
はじめに
1. 本質的な技術価値追求による新市場開拓
1.1 破壊的技術の獲得による市場の確保 D
1.2 技術の機能展開による新市場の開拓 B
1.2.1 プッシュ型 B-1
1.2.1 プル型 B-2
1.3 新しい領域への挑戦 N
2. 新規事業創出の現場づくり
おわりに
第2節 研究開発プロジェクトを立ち上げるために必要なこと
はじめに
1. 研究開発プロジェクトを立ち上げるために重要なこと
2. 筋のいいテーマ
2.1 筋のいいテーマとは
2.2 価値について
2.3 筋のいいテーマをどうやって見つけるか
3. 経営層の理解
4. 人・チーム
5. まとめと問い
おわりに
第2章 プロジェクトテーマ選定と推進
第1節 ファクトに基づく未来洞察と新規ビジネス探索
はじめに
1. 新規ビジネス探索と未来洞察
2. ファクトに基づく未来洞察
おわりに
第2節 製品化をにらんだ研究テーマ選定
~製品・事業開発の成否を決定する研究開発テーマの選定法~
はじめに
1. 研究・事業化テーマ選定とは?
1.1 研究開発テーマとは何か?
1.2 研究開発/事業開発テーマ選定における『勝利の方程式』
2. 研究・事業開発と「両利きの経営」
2.1 事業環境と経営戦略の変化
2.2 新規製品・新規事業分野での開発テーマ選定
3. 研究・事業テーマ選定と事業化(イノベーション)文化構築
3.1 研究テーマ選定実務の進め方
3.1.1 研究テーマ選定の前の準備
3.1.2 研究テーマ選定の担い手
3.1.3 研究テーマ選定の進め方
3.2 技術棚卸しや新規研究テーマ申請の研究技術開発管理制度への組み込み
4. 研究テーマ選定に携わる研究開発マネージャー
おわりに
第3節 VUCA環境下での研究開発テーマの発掘とその進め方
はじめに
1. VUCA環境下でのテーマ発掘の難しさ
1.1 VUCAとは
1.2 テーマ発掘から実行の流れについて
1.3 既存事業と新規事業の違い
1.4 テーマ発掘の難しさ
2. テーマ発掘の手法について
2.1 MCHCのKAITEKI Vision 30について
2.2 KAITEKI Vision 30からのテーマ発掘について
2.3 そのほかのテーマ発掘手法について
2.4 変化を与えて観察する
2.5 変化点の見出し方
2.6 イノベーションを生み出せる人!?
3. テーマの推進について
3.1 テーマの性格付けとポートフォリオ管理について
3.2 具体的なテーマの推進方法
3.3 客観的なテーマ評価の難しさ
3.4 ステージゲート法とその実行方法について
4. 研究開発テーマを進める上での大切な視点や人材・組織について
4.1 研究開発人材にとって大切な素養
4.2 失敗とどう付き合うか?
4.3 研究開発を推進する人と組織について
おわりに
第3章 製品化・事業化への道筋
第1節 SDGsを意識した新事業、新製品の立ち上げ方とその推進リーダーの役割
はじめに066
1. 旭化成におけるSDGsへの取組み
2. 推進リーダーの役割
2.1 開発テーマの選定
2.2 適切な研究開発メンバーをそろえること
2.3 PDCAをしっかり回すこと
2.4 早く仕事をする習慣を付けること(付けさせること)
3. SDGsを意識した研究開発の例
3.1 アルカリ水電解技術の開発
3.2 正浸透膜システム
おわりに
第2節 企業における新規事業・イノベーションの課題と新アプローチ
はじめに
1. 研究開発と事業化判断の仕組み
1.1 事業化を目指す研究開発のステージアップ
1.2 研究開発と経営戦略との同期化による開発文化の醸成
2. 事業化を成功に導くための弱点の克服
2.1 開発テーマの工業化技術の充足
2.2 顧客の顕在化不足の克服
3. 事業化促進のための社内体制
おわりに
第3節 研究開発の道のりとニーシーズ志向
はじめに
1. 研究開発者の人へ
2.研究開発者になる人へ~ニーズの翻訳と研究スキーム~
3. 研究開発者としての心構え
おわりに
第4章 事業マネジメントと市場開拓
1節 事業拡大と並行した研究戦略およびマネジメントの仕組み
はじめに
1. 研究テーマの設定
1.1 現状の技術、市場の把握
1.2 研究テーマの体系化
1.3 研究テーマの見える化
2. 研究テーマの評価
2.1 研究開始前の評価
2.2 研究の継続・中止の判断
3. 研究から商品化へ
3.1 研究テーマ進捗の共有
3.2 化粧品における商品化
おわりに
第2節 グローバル企業のイノベーション戦略を支える企業文化と仕組み
はじめに
1. グローバル企業のイノベーション潮流
1.1 どのような方法でイノベーションが起こされているのか
1.2 イノベーションを推進するものは何か
1.3 グローバル企業での人材育成
1.4 イノベーション戦略とは
1.5 イノベーターに必要な能力とは
2. 企業文化とイノベーションを推進する仕組み
2.1 企業文化の役割
2.2 3M社の企業文化
2.3 イノベーションを支える人事の仕組み
3. 新事業開発のための顧客インサイトとマーケット分析手法
3.1 新事業開発に必要なこと
3.2 技術の機能分析と市場探査
3.3 顧客インサイト
3.4 ターゲット市場の理解
おわりに
第5章 イノベーションとプロジェクトマネジメント
第1節 両利きの経営と新事業創出の取り組
はじめに
1. ありたい姿(長期ビジョン)とその実現に向けた仕組みと考え方
1.1 新規事業創出に向けた組織とコーポレート部門の役割
1.2 新規事業の考え方
1.3 新規事業創出を担う人材の育成
2. 新規事業創出を支える技術開発とプロジェクトマネージメント
2.1 オープンイノベーションの活用
2.2 開発プロジェクトの仕組み
3. プロジェクトマネージメントに王道なし
3.1 事業化を目指した技術開発プロジェクトで留意するポイント事例
3.1.1 ゴール設定の確認
3.1.2 技術者のモチベーション・発想にありがちな罠
おわりに
第2節 イノベーションに結び付けるプロジェクトマネジメントの進め方
はじめに
1. プロジェクトでのマネジメントとは
2. お客様に迷惑をかけないために
3. 社内をスムーズにまわすために
4. プロジェクトをマネジメントするために
おわりに
第6章 オープンイノベーション
第1節 多様性が求められる時代のイノベーションの成功要因
はじめに
1. イノベーションとは
2. イノベーションの成功要因
3. 日本人の創造性とイノベーション
4. イノベーションと人・組織
4.1 ステージ別の人材と特徴
4.2 弱いつながりの強み
4.3 人材の多様性
4.4 リーダーシップ
4.5 組織における遊び
4.6 失敗に寛容な文化
4.7 ネットワーク密度の高さと目利きの重要性
4.8 上下間の風通しの良さ
4.9 関係の質
5. イノベーションと場
5.1 創造性と環境影響
5.2 近接性と連携度
おわりに
第2節 研究開発におけるオープンイノベーションの実例から見た意義
1. はじめに
2. ホンダでの定説否定から生まれるイノベーション
3. サムスンにおけるイノベーションに向けた布石
4. ホンダとサムスンの経験を活かして
5. 技術経営とイノベーション創出における真髄
第7章 技術・ビジネスの目利き
第1節 技術・ビジネスにおける目利き力の養い方
~利益貢献できる研究開発テーマの設定について~
はじめに
1. 研究開発テーマの選択の方向性
1.1 世の中の大きなトレンドに合致していること
1.2 自社のコア技術が活かせること
1.3 他社がやっていない、あるいは他社が大きく進んでいないこと
2. 研究開発テーマの発掘
3. 研究開発テーマを見出すきっかけになったり、育てることに有用な調査
3.1 コンサルティング会社の活用
3.2 展示会、学会の活用
3.3 自らが行う情報収集
3.4 人脈の活用
3.5 日頃からの情報収集の習慣づけ
おわりに
第2節 技術・ビジネスにおける「目利き力」の鍛え方
はじめに
1. 目利きとは
1.1 目利きは難しい
1.2 何をどの様に見るのか
2. 研究開発の視点
2.1 個人による目利き
2.2 組織による目利き
2.2.1 テクノロジープラットフォーム
2.2.2 ステージゲート
2.2.3 ネットワーク密度の向上
2.2.4 企画の質の定量評価
2.2.5 制度運用の罠
おわりに
第3節 グローバル企業での技術・ビジネスの目利きの発掘・育成
はじめに
1. 技術・ビジネスの目利き
1.1 技術・ビジネスの目利きとはどのような人
1.2 技術・ビジネスの目利きアンケート内容
1.2.1 「技術・ビジネスの目利き」と呼ばれる人が、会社にいるか
1.2.2 どのような人を「技術・ビジネスの目利き」と呼ぶか
1.2.3 「技術・ビジネスの目利き」と思うところ
1.2.4 「技術・ビジネスの目利き」に必要なキャリアとは何か
1.2.5 「技術・ビジネスの目利き」を育成するための施策は何か
1.2.6 「技術・ビジネスの目利き」に求められる能力とは何か
1.2.7 「技術・ビジネスの目利き」人材育成の基準としてパラメーター化できるか
2. グローバル企業での“技術・ビジネスの目利き”視点の活用
2.1 技術・ビジネスの目利きを個人ではなくチームで達成
2.2 技術・ビジネスの目利きの視点をマニュアル化
2.2.1 「技術・ビジネスの目利き」の視点で判断するツールRWW
2.2.2 「技術・ビジネスの目利き」の視点でリスクマネージメント
おわりに
第8章 イノベーションを支援する知財組織の役割
はじめに
1. 環境認識
1.1 知財費用
1.2 知財組織
1.3 出願動向
2. 知財管理
2.1 知財のポートフォリオと知財価値評価
2.2 知財情報の活用
3. イノベーション支援
3.1 知財組織の役割
3.2 国際標準化戦略
3.2.1 用語の定義
3.2.2 品質保証
3.2.3 国際標準化活動
3.3 技術動向調査
おわりに
第9章 企業のSDGsおよびESGに対する取り組みについて(アンケート調査報告)
はじめに
1. SDGsへの企業の取り組みについて
1.1 SDGsに対して、環境配慮型商品の事業開発や取り組みはございますか
1.2 「SDGsに対して取り組んでいる」、その具体的な内容を教えてください
1.3 企業がSDGsに取り組むメリットは何だと考えますか
1.4 企業がSDGsに取り組む上での課題は何だと考えますか
1.5 取引先企業を選択する際、相手企業側のSDGsへの取り組み姿勢は重視しますか
1.6 相手企業のSDGsへの取り組みを「大いに重視」「やや重視」する場合、具体的にどのような取り組みを評価されますか
2. ESG投資について
2.1 ESG投資対策がなされていますか
2.2 「ESG投資対策がある」場合、その具体的な取り組みを教えてください
2.3 ESG投資のための情報をどのようなところから収集していますか
おわりに