次世代二次電池が必要とされる理由として次の二点が挙げられる。一点目の理由として、電気自動車やエアモビリティーなどの移動体用電池に対してより大きなエネルギー密度が求められることが挙げられる。二点目は、太陽光や風力などの自然エネルギー利用のための定置用電池に対して体積の縮小化が求められていることが挙げられる。これらは、地球温暖の要因となっている二酸化炭素の削減と密接に関連しており、将来の二酸化炭素フリーのエネルギー社会を具現化するための必須の技術である。視点を変えて資源の立場から次世代二次電池を眺める。今後、世界中で電気自動車や自然エネルギー導入を促進すると10倍あるは100倍の数の二次電池の生産が必要となる。このような状況下で発生する問題として資源埋蔵量が挙げられる。この問題も次世代二次電池が必要となる要因になっている。種々の次世代二次電池の研究開発が進められてきたが、実用化に至っている二次電池は未だにない。本書では次世代二次電池の問題点の解決に向けて実施されてきた研究を可動(反応)イオン種ごとにまとめて紹介する。
目次
【第Ⅰ編 総論】
第1章 次世代二次電池の開発動向
1 はじめに
2 次世代二次電池の特徴
3 次世代二次電池の開発現状の概要
3.1 全固体電池
3.2 リチウム硫黄電池
3.3 リチウム空気電池
3.4 多価イオン電池
3.5 フッ化物電池
3.6 リチウム金属二次電池
3.7 その他
4 まとめ
第2章 全固体電池
1 はじめに
2 固体電解質の導電率
3 機械的性質
4 大気安定性
5 電極活物質に対する安定性
6 おわりに
第3章 正極不溶型リチウム硫黄電池の開発
1 はじめに
2 リチウム硫黄電池の課題
3 正極不溶型電解液の開発
4 Li負極の可逆性増大
5 体積変化の大きなコンバーション反応に適する正極構造設計
6 現状と今後の展望
第4章 空気電池
1 はじめに
2 空気電池の歴史
3 研究開発の動向
4 空気電池の特徴と課題
4.1 電池電圧とエネルギー密度
4.2 電解液への酸素の溶解と拡散
4.3 空気極での反応と課題
4.4 電解液の課題
5 最後に
【第Ⅱ編 各論】
<リチウム系>
第1章 リチウム過剰型正極材料の研究開発
1 はじめに
2 リチウム過剰マンガン系アニオンレドックス材料
3 リチウム過剰ニッケル系アニオンレドックス材料
4 リチウム過剰バナジウム系カチオンレドックス材料
5 おわりに
第2章 リチウム硫黄二次電池
1 はじめに
2 正極材料の改良による溶出抑制アプローチ
3 活性炭を利用した硫黄正極の特徴
4 硫黄正極に適するミクロ多孔性活性炭の作製法
5 アルカリ賦活による活性炭のミクロ細孔形成
6 ミクロ多孔質炭素への硫黄複合化と充放電挙動
7 おわりに
第3章 硫化物系全固体リチウム電池
1 硫化物系全固体リチウム電池の概要
2 リチウムイオン導電体の開発
2.1 イオン導電体の起源とリチウム導電体探索の始まり
2.2 リチウム導電体探索の転換期
3 硫化物系全固体リチウム電池に関する研究の流れ
3.1 バルク型全固体リチウム電池研究の始まりと正極界面の課題
3.2 全固体リチウム電池研究の進捗と新材料の発見
3.3 Li10GeP2S12型材料とその物質群開拓
3.4 Li10GeP2S12型材料の特徴と全固体電池応用への期待
3.5 Li10GeP2S12型材料を使った全固体電池の特性
3.6 硫化物材料を使った全固体リチウム電池の課題
4 今後の展望
第4章 酸化物型全固体リチウム電池
1 はじめに
2 酸化物型全固体電池の課題
3 酸化物型全固体電池の開発
4 おわりに
第5章 レドックスメディエータの高効率利用による非水系リチウム空気二次電池の開発
1 はじめに
2 非水系LABの作動原理と課題
3 レドックスメディエータ(RM)の効果
4 RM塗工空気極の開発
5 カーボンナノチューブ空気極への展開
6 おわりに
<ナトリウム系>
第6章 酸化物系ナトリウムイオン二次電池製造のための焼結助剤の効果
1 緒言
2 ナトリウムイオン伝導固体電解質焼結のための指針
3 ナシコン型NZSP系
3.1 母組成の調整と異元素ドーピング
3.2 ホウ酸ナトリウム系焼結助剤
3.3 リン酸塩ガラス系焼結助剤
3.4 フッ化ナトリウム焼結助剤
3.5 水酸化物助剤による冷間焼結
4 ベータアルミナ電解質
第7章 酸化物系結晶化ガラスによるナトリウムイオン電池開発
1 Na2FeP2O7結晶化ガラスによる全固体電池の創製
2 レーザーによるリン酸鉄の局所加熱と固体電解質との接合
3 NaFePO4のレーザー誘起ガラス化
4 まとめと今後の展望
第8章 ナトリウム硫黄二次電池(NAS電池)の開発
1 はじめに
2 ナトリウム硫黄電池とは
2.1 セル
2.2 モジュール
3 ナトリウム硫黄電池の開発
3.1 固体電解質ベータアルミナの開発
3.2 セルの要素技術開発
3.3 モジュールの開発
3.4 コンテナタイプユニットの開発
4 最後に
<マグネシウム系>
第9章 マグネシウム金属電池に適した電解液およびマグネシウム金属組織構造
1 はじめに
2 マグネシウム金属電池用電解液
3 マグネシウム金属負極:組織構造と電気化学特性
4 電解液-マグネシウム金属界面における課題
5 おわりに
第10章 ナノ結晶酸化物の開発とマグネシウム二次電池正極応用
1 はじめに
2 正極活物質の課題
3 スピネルナノ粒子合成法の開発
3.1 水熱・ソルボサーマル法
3.2 ホットインジェクション法
3.3 アルコール還元法
4 トンネル型二酸化マンガンナノ粒子合成法の開発
5 おわりに
第11章 マグネシウム二次電池(酸化物系/硫化物系正極材料)
1 はじめに
2 MnO2多形の相安定性と電気化学特性
3 四面体配位を好むZnによるスピネル型構造の安定化
4 欠陥スピネル型酸化物を用いた単相反応の利用
5 高速充放電を実現する液体硫黄/硫化物複合正極
6 おわりに
第12章 マグネシウム-硫黄二次電池
1 はじめに~硫黄二次電池におけるマグネシウム金属の強み
2 Mg-S電池の技術課題
3 Mg-S電池の開発動向(世界)
3.1 硫黄正極
3.2 Mg電解液
3.3 マグネシウム負極
4 Mg-S電池の開発動向(国内)
5 最後に
<カルシウム系>
第13章 カルシウム系二次電池用電極材料の開発動向
1 はじめに
2 カルシウム系二次電池用電極材料の研究開発状況
2.1 負極材料
2.2 正極材料
3 二次元層状構造が補強された無水正極材料の評価例(LiV3O8)
3.1 LiV3O8の合成および電気化学特性評価
3.2 充放電に伴うLiV3O8正極の反応解析
4 三次元フレームワーク構造無水正極材料の評価例(V6O13)
4.1 V6O13の合成および電気化学特性評価
4.2 充放電に伴うV6O13正極の反応解析
5 おわりに
第14章 カルシウム蓄電池〜錯体水素化物を用いたハロゲンフリー電解質〜
1 はじめに
2 電池材料としての錯体水素化物
3 カルシウム蓄電池
4 カルシウム蓄電池用電解液の発展
4.1 リチウムイオン二次電池用電解液からの類似系
4.2 ハイドロボレート(錯体水素化物)系電解液
4.3 アルコキシボレート系電解液
5 クロソ型ハイドロボレート系電解液を用いたカルシウム蓄電池
5.1 Ca(CB11H12)2電解質塩の合成
5.2 Ca(CB11H12)2電解液の調整と電気化学評価
5.3 Ca(CB11H12)2電解液を用いたカルシウム硫黄電池
6 おわりに
<亜鉛系>
第15章 亜鉛ニッケル二次電池
1 はじめに
2 亜鉛ニッケル電池の反応,起電力,エネルギー密度
3 亜鉛ニッケル二次電池の問題
4 反応空間規制型亜鉛負極の開発
4.1 亜鉛酸イオンの濃度分布
4.2 反応空間規制:Segmentation of Electrolyte
4.3 充放電特性
5 おわりに
第16章 カーボン亜鉛ハイブリッド蓄電池
1 カーボン亜鉛ハイブリッド蓄電池の構成
2 安定したサイクル性能
3 活性炭と静電容量について
4 耐環境性能と入出力性能
5 自己放電と故障モード
6 今後の展望
第17章 亜鉛空気二次電池
1 亜鉛空気二次電池の特徴
1.1 高いエネルギー密度
1.2 高安全性と高出力特性
1.3 低コスト
2 一次電池としての研究開発の歴史
3 二次電池化への課題と研究開発動向
3.1 エネルギー変換効率
3.2 空気極の寿命特性
3.3 亜鉛極の寿命特性
3.4 電解液の寿命特性
<アルミニウム系>
第18章 アルミニウム金属負極アニオン二次電池
1 電解液
2 正極
2.1 炭素系正極
2.2 硫黄系正極
第19章 アルミニウムイオン電池,アルミニウム硫黄電池の開発
1 序論
2 非水溶性電解質系アルミニウム二次電池
3 溶融クロロアルミン酸塩
4 クロロアルミン酸塩系電解液に対する電池の耐久性
5 高分子ゲル系電解質
5.1 塩素フリー電解質
5.2 正極材料
5.3 グラファイト正極,炭素系正極
6 正極に有機物を用いたアルミニウム二次電池
7 アルミニウム硫黄電池