20世紀後半になると,とくに先進国では,人びとの生活が豊かになり,衛生状態が改善され,寿命が大きく伸びた。人びとは食糧不足による飢餓や栄養失調から解放されたが,かわって肥満や糖尿病,高血圧などの生活習慣病に悩まされることになった。
「糖質・糖類」は食物において主要なエネルギー源であるのみならず,食べ物の味や匂い,さらに満腹感をもたらす。食べるという行為により,幸福や安心を感じることができる。加えて,種々の食品成分は様々な生理機能を有する。
本書は,糖質・糖類をベースにした食品成分の機能に焦点を当てて,最新の話題を専門家の先生方に解説していただいた。糖質・糖類にご興味をお持ちの方々に本書をお勧め致します。(第1章より抜粋)
目次
【技術編】
第1章 「機能性糖質・糖類」に関する序論
1 食品成分表示における「機能性」
1.1 食品の「機能性」
1.2 食品成分表示の一元化
1.3 機能性表示食品制度
1.4 機能性関与成分
1.5 各種辞典や生化学教科書における「糖質」および「糖類」
1.6 食品表示基準による「糖質」および「糖類」
2 食品表示における「糖質」および「糖類」
2.1 食品表示法の概要
2.2 栄養成分の量および熱量
2.3 栄養表示の記載様式
2.4 糖類ゼロ,糖質ゼロ,糖類オフ,糖質オフ
2.5 外国における炭水化物の定義
2.6 機能性表示食品
3 食品における糖質の機能
3.1 食品の機能性
3.2 食品新素材と新食品
3.3 糖質・糖類に関連する「食品新素材」
4 栄養学における炭水化物および糖質
5 糖質の一次機能
6 糖質の二次機能
6.1 甘味など
6.2 メイラード反応
6.3 カラメル化
6.4 加熱香気
6.5 酵素的褐変
6.6 テクスチャー
7 糖質の三次機能
8 食物繊維の定義
9 食物繊維の生理機能
10 ルミナコイド
11 食物繊維の定量法
12 ルミナコイドの受容
13 プロバイオティクス,プレバイオティクス,シンバイオティクス,バイオジェニクス,ポストバイオティクスほか
13.1 プロバイオティクス
13.2 善玉菌,悪玉菌,日和見菌
13.3 プレバイオティクス
13.4 シンバイオティクス
13.5 バイオジェニックス
13.6 ポストバイオティクス
第2章 トレハロースの特性と健康維持や運動パフォーマンスへの貢献
1 はじめに
2 トレハロース摂取による血糖値及びインスリン値の推移
3 トレハロースの耐糖能改善効果
4 トレハロースの運動パフォーマンスに与える影響
4.1 トレハロース摂取による運動パフォーマンス向上
4.2 トレハロースのマウスリンスが運動パフォーマンスに与える影響
5 おわりに
第3章 パラチノース®(イソマルツロース)の新たな知見と活用
1 緒言
2 パラチノースが血管機能に与える影響
3 パラチノースが運動時の水分補給に与える影響
4 パラチノースが作業時の注意力や眠気に与える影響
5 おわりに
第4章 ラクチュロース
1 はじめに
2 ラクチュロースとは
3 ラクチュロースの食品としての機能
3.1 ビフィズス菌増殖作用
3.2 便通促進作用
3.3 ミネラル吸収促進作用
3.4 血糖値への影響
4 ラクチュロースの医薬品としての機能
4.1 便秘薬
4.2 高アンモニア血症の治療薬
5 ラクチュロースを用いた検査
5.1 腸管壁バリア機能の評価
5.2 呼気水素ガス試験
6 安全性
7 加工特性
8 おわりに
第5章 機能性食品素材「キチン・キトサンオリゴ糖」の応用
1 概要
2 製造方法
3 特性
3.1 味質と甘味度
3.2 溶解度
3.3 pH安定性
3.4 難消化性
3.5 腸内細菌利用性
4 安全性
5 キチンオリゴ糖の生理機能
5.1 免疫賦活作用(リンパ球を用いた検討)
5.2 免疫賦活作用(マウス単球細胞RAW264.7を用いた検討)
5.3 抗腫瘍作用(マウスを用いた検討)
6 キトサンオリゴ糖の生理機能
6.1 免疫賦活作用
6.2 抗腫瘍作用
6.3 抗菌作用
7 応用
8 おわりに
第6章 リン酸化オリゴ糖カルシウムの機能性と製品応用
1 はじめに
2 研究の背景
3 カルシウムによる初期う蝕へのアプローチ
4 初期う蝕の再結晶化
4.1 歯エナメル質の構造
4.2 初期う蝕の結晶評価法の確立
5 リン酸化オリゴ糖カルシウム(POs-Ca)の初期う蝕への応用
5.1 初期う蝕の結晶化
5.2 初期う蝕の再石灰化・再結晶化の最適条件探索
5.3 POs-Caとフッ化物併用可能性の検討
5.4 POs-Caとフッ化物併用最適条件の探索
6 製品応用
7 おわりに
第7章 イソマルトオリゴ糖
1 はじめに
2 製造方法と製品組成
2.1 製法
2.2 製品の糖組成
3 製品特性
3.1 甘味特性
3.2 保湿性
3.3 耐熱性,耐酸性
3.4 メイラード反応
3.5 発酵性
3.6 食品用途への応用例
4 生理的な特徴
4.1 ビフィズス菌の増殖効果
4.2 消化性
4.3 安全性
5 分岐構造に着目した糖化製品
6 おわりに
第8章 α-シクロデキストリンの包接作用やプレバイオティクス作用を介した機能性
1 はじめに
2 包接作用を介したα-CDの小腸における機能性
2.1 食後血糖値の上昇抑制効果
2.2 脂質プロファイルの改善効果
2.3 界面活性剤や過酸化脂質の腸管細胞毒性に対する保護効果
3 プレバイオティクスとしての大腸における機能性
3.1 資化性の特徴
3.2 腸内細菌叢の改善と抗肥満効果
3.3 短鎖脂肪酸の増加を介した種々の健康効果
3.4 抗動脈硬化
3.5 運動パフォーマンスの向上効果
3.6 炎症性腸疾患の抑制効果
3.7 抗アレルギー効果
4 α-CDの物性
4.1 水溶時の性質
4.2 熱安定性
5 おわりに
第9章 β-シクロデキストリン
1 はじめに
2 製造法
3 物性
4 関連法規等
5 利用例
5.1 難水溶性物質の溶解性改善
5.2 水溶液の安定化
5.3 抽出への利用
5.4 苦味の抑制
5.5 粉末化による香料の徐放
6 まとめ
第10章 フラクトオリゴ糖
1 概要
2 製造方法
3 生理機能と作用機序の最新知見
3.1 ビフィズス菌増殖効果
3.2 整腸作用
3.3 難消化性
3.4 ミネラル吸収促進作用
3.5 難う蝕性
3.6 便臭軽減作用
4 安全性評価
4.1 食経験
4.2 毒性試験
4.3 下痢に対する最大無作用量
5 用途展開や実用化
【市場編】
第1章 機能性糖質・糖類
1 概要
1.1 糖質,糖類の定義
1.2 機能性糖質・糖類とは
1.3 糖質・糖類の種類
2 機能性糖質・糖類の動向
2.1 市場拡大の背景
2.2 機能性表食品制度への新規登録
2.3 糖質オフ・ゼロ食品市場の形成
第2章 甘味料としての糖質・糖類
1 概要
1.1 甘味料市場の概要
2 甘味料国内市場の動向
2.1 糖質系甘味料
2.2 非糖質系甘味料
第3章 機能性糖質・糖類の開発動向
1 希少糖の研究開発動向
2 オリゴ糖の機能性研究開発の動向
第4章 機能性糖質・糖類の原料別動向
1 単糖類
1.1 概要
1.2 グルコース
1.3 フルクトース
1.4 ガラクトース
1.5 マンノース
1.6 D-リボース
1.7 L-アラビノース
1.8 キシロース
1.9 希少糖
1.10 その他
2 二糖類/オリゴ糖
2.1 マルトオリゴ糖
2.2 イソマルトオリゴ糖
2.3 シクロデキストリン
2.4 トレハロース
2.5 パラチノース(イソマルツロース)
2.6 フラクトオリゴ糖
2.7 1-ケストース
2.8 ラクトスクロース
2.9 ラフィノース
2.10 ガラクトオリゴ糖
2.11 ラクチュロース
2.12 キシロオリゴ糖
2.13 アガロオリゴ糖
2.14 キチンオリゴ糖
2.15 キトサンオリゴ糖
2.16 ニゲロオリゴ糖
2.17 ゲンチオオリゴ糖
2.18 コーヒー豆マンノオリゴ糖(コーヒーオリゴ糖)
2.19 マルトシルトレハロース
2.20 環状四・五糖
2.21 グリコシルスクロース
2.22 アルギン酸オリゴ糖
2.23 リン酸化オリゴ糖カルシウム
2.24 エピラクトース
2.25 シクロフラクタン
3 糖アルコール
3.1 ソルビトール
3.2 エリスリトール
3.3 キシリトール
3.4 マルチトール
3.5 還元水飴
3.6 還元パラチノース
3.7 ラクチトール
4 高甘味度甘味料
4.1 アセスルファムK(アセスルファムカリウム)
4.2 アスパルテーム
4.3 アドバンテーム
4.4 スクラロース
4.5 ネオテーム
4.6 ステビア抽出物