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レポートナンバー 0000037159

遷移金属ダイカルコゲナイドの基礎と最新動向

株式会社シーエムシー出版

Fundamentals and Recent Trends in Transition Metal Dichalcogenides

発刊日 2023/12/27

言語日本語

体裁B5/326ページ

ライセンス/価格326ページ

0000037159

書籍版 67,100 円(税込)

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ポイント

二次元層状物質として多彩な物性や機能が注目される遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)についてまとめた成書!
第1編ではTMDの構造と物性に関する事項を網羅し、第2編でバルク単結晶成長や化学気相成長、ドーピングなど合成・構造制御法について詳述!
第3編ではトランジスタや発光デバイス、太陽電池、水素発生触媒などの応用展開に向けた研究を紹介!

レポート概要

【刊行にあたって】

層状構造を持つナノ物質は物質科学における革新的な発見と大きく関連している。例えば、炭素のナノ物質(ナノカーボン)では、1985 年のC60 フラーレンの発見に続き、1991 年にはカーボンナノチューブ、そして2004 年に単層のグラフェンの単離が報告された。
(中略)
グラフェンが注目を集めた理由の一つは、原子1 個分の厚さにもかかわらず、強靭かつ安定であり、電流をよく流す性質を持つ点が挙げられる。このような薄い電子材料は、近年、微細化が進む電子素子の研究開発の観点からも大きな注目を集めた。一方、グラフェンは、シリコンなどの半導体材料のように電流を制御することには不向きである。このため、半導体として利用でき、かつグラフェンのような薄い物質が切望されていた。
そこで注目を集めたのが、本書で扱う遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)である。2010 年頃より、TMD も注目を集め始め、現在に至るまで世界中で爆発的に研究が進展している。
(中略)
TMD の研究が急速に進展する中、2016 年には、本書の前身となる「カルコゲナイド系層状物質の最新研究」が刊行された。この書籍では、TMD を含む層状物質の基礎と応用が網羅されており、その分野に参入する研究者や学生、そして専門家にとっても有益な情報源となっている。現在でも、TMD の研究スピードは衰えることなく、その重要性は以前にも増してきた。この7 年間において、合成技術、物性、応用などの様々な新たな知見や技術が続々と報告されている。このような状況の下、基礎知識と最新の研究を整理した書籍の必要性が高まり、本書籍の企画に至った。

宮田耕充、吾郷浩樹、松田一成、長汐晃輔
(本書「刊行にあたって」より抜粋)

レポート詳細

監修

宮田耕充、吾郷浩樹、松田一成、長汐晃輔

著者一覧

宮田耕充   東京都立大学
吾郷浩樹   九州大学
松田一成   京都大学
長汐晃輔   東京大学
斉木幸一朗  東京大学名誉教授
小鍋 哲   法政大学
末永和知   大阪大学
丸山実那   筑波大学
高燕林    筑波大学
岡田晋    筑波大学
坂野昌人   東京大学
齋藤理一郎  東北大学名誉教授;台湾師範大学特別教授
宮内雄平   京都大学
柳和宏    東京都立大学
岩佐義宏   東京大学;理化学研究所
井手上敏也  東京大学
島﨑佑也   理化学研究所
笹川崇男   東京工業大学
上野啓司   埼玉大学
木下圭    東京大学
小野寺桃子  東京大学
町田友樹   東京大学
岡田光博   産業技術総合研究所
山田貴壽   産業技術総合研究所
李世勝    元・物質・材料研究機構
谷口貴章   物質・材料研究機構 
北浦良    物質・材料研究機構
蓬田陽平   東京都立大学
入沢寿史   産業技術総合研究所
森伸也    大阪大学
安田憲司   コーネル大学
白石誠司   京都大学
竹延大志   名古屋大学
蒲江     東京工業大学
加藤俊顕   東北大学
張奕勁    東京大学
大野雄高   名古屋大学
河邉佑典   名古屋大学
高橋康史   名古屋大学;金沢大学
桐谷乃輔   東京大学
早水裕平   東京工業大学

目次

【第1編:構造と物性】

第1章 構造と電子状態
1 はじめに
2 単層TMDの電子状態
 2.1 低エネルギー有効ハミルトニアンとエネルギーバンド
 2.2 ベリー曲率の効果
3 単層TMDの光物性とバレー物性
 3.1 光学応答の選択則
 3.2 励起子
 3.3 バレー物性
4 ファンデルワールスヘテロ構造
 4.1 電子状態:タイプII構造
 4.2 層間励起子
 4.3 層間励起子の特徴
5 モアレ系の光物性
 5.1 モアレ超格子構造
 5.2 モアレポテンシャルとモアレ励起子
 5.3 モアレ励起子の選択則
 5.4 モアレハバード物理
6 まとめ

第2章 電子顕微鏡観察
1 はじめに
2 単層遷移金属ダイカルコゲナイドの多相系
3 電子分光(EELS)による元素分析
4 単層遷移金属ダイカルコゲナイドのエキシトン分散関係測定
5 二次元材料のヘテロ積層構造における吸収スペクトルのツイスト角依存性
6 1次元・2次元ハイブリッド超格子
7 まとめ

第3章 第一原理計算と電子構造
1 はじめに
2 2層TMDの電界効果
3 2層TMD面内ヘテロ構造の電子物性
4 2層ヤヌスTMDの電子構造
5 まとめ

第4章 角度分解光電子分光による電子構造観測
1 はじめに
2 角度分解光電子分光による2次元結晶の電子構造研究
3 機械的剥離によって得られる原子層WTe2の電子構造の直接観測
 3.1 角度分解光電子分光測定用の試料作製および実験条件
 3.2 電子状態の層数依存性
 3.3 積層秩序がもたらす結晶構造の非対称性
4 おわりに

第5章 二次元半導体ヘテロ構造におけるモアレの物理と光科学
1 はじめに
2 二次元半導体の光学的性質と二層ヘテロ構造のモアレ超格子
3 二次元半導体二層ヘテロ構造の光学的性質
4 モアレ励起子の微細構造
5 モアレ励起子のダイナミクス
6 二次元半導体二層ヘテロ構造の微細加工
7 二次元半導体二層ヘテロ構造のモアレ荷電励起子(トリオン)
8 モアレ荷電励起子(トリオン)のダイナミクスと微細構造
9 まとめ

第6章 ラマン分光
1 ラマン分光とは
 1.1 ラマン分光の概要
 1.2 ラマン分光の原理
 1.3 ラマン分光装置
 1.4 ラマン活性モード
2 遷移金属カルコゲナイド物質のラマンスペクトル
 2.1 ラマンスペクトルの概要
 2.2 ゾーンセンターモード
3 円偏光ラマン分光とラマンテンソル
4 共鳴ラマン分光
5 二重共鳴ラマン分光スペクトル
6 ゲート変調ラマン分光法
7 まとめ

第7章 励起子輸送
1 はじめに
2 単層TMDC横ヘテロ構造における指向性励起子輸送
 2.1 WSe2 -MoSe2 横ヘテロ構造における指向性励起子輸送
 2.2 組成が徐々に変化するWS2x Se(2-2x)混晶における指向性励起子輸送
3 おわりに

第8章 格子不整合に積層した遷移金属ダイカルコゲナイドの熱伝導
1 はじめに
2 原子層物質が人為的に積層された系の熱伝導の概略
3 金をトランスデューサとした時間領域サーモリフレクタンス計測システムの構築
4 4層積層したTMDC原子層の熱伝導
5 最近の人工積層系の熱伝導
6 おわりに

第9章 電界誘起超伝導
1 はじめに
2 電界効果トランジスタと電界誘起超伝導
3 TMDにおけるイジング超伝導
4 おわりに

第10章 遷移金属ダイカルコゲナイドの対称性と量子力学的整流現象
1 はじめに
2 MoS2界面電解誘起超伝導相における整流現象
3 WS2ナノチューブにおける超伝導整流特性
4 3R-MoS2における光起電力効果
5 ヘテロ界面や一軸性歪み印加試料における光起電力効果
6 まとめと展望

第11章 半導体モアレ格子における強相関電子
1 はじめに
2 励起子を利用した電子系のセンシング
3 サブバンドの検出と強相関電子状態
4 電子結晶化の励起子ウムクラップ散乱による検出
5 まとめと展望

第12章 トポロジカル電子状態
1 はじめに
2 トポロジカル電子状態とは
3 トポロジカル絶縁体
4 トポロジカル半金属・トポロジカル超伝導体
5 おわりに

【第2編:合成・構造制御】

第13章 遷移金属ダイカルコゲナイドのバルク単結晶成長
1 はじめに
2 TMDCの構造
3 TMDCのバルク単結晶成長
 3.1 石英アンプルの準備
 3.2 原料と輸送剤の準備
 3.3 石英アンプルの真空封止
 3.4 管状炉での石英アンプル加熱
 3.5 加熱後の冷却,試料取り出しと洗浄

第14章 剥離と転写
1 はじめに
2 テープによる剥離
3 ファンデルワールスヘテロ構造の作製法(基本)
 3.1 ボトムアップの作製法
 3.2 トップダウンの積層
4 ファンデルワールスヘテロ構造の作製法(発展)
 4.1 Tear-and-stack法
 4.2 フリップ法
5 まとめ

第15章 化学気相成長法
1 はじめに
2 TMD CVD成長の基礎
3 アルカリ金属アシスト
4 アルカリ金属アシストの応用①: MoS2 p-n接合の実現
5 アルカリ金属アシストの応用②: 結晶相制御されたWS2の成長
6 おわりに

第16章 化学気相成長:ドーピング
1 TMDCへの置換ドーピング
2 CVD法によるドープ型TMDCの合成
 2.1 混合遷移金属酸化物を前駆体としたCVD法
 2.2 ハロゲン化物を前駆体としたCVD法
2.3 水溶性化合物の塗布膜を前駆体としたCVD法
 2.4 有機金属化合物を前駆体としたCVD法
 2.5 混合カルコゲンを前駆体としたCVD法
3 まとめと展望

第17章 化学気相成長:ヘテロ構造
1 はじめに
2 面内ヘテロ構造作製技術の進展
3 CVDで作製した積層ヘテロ構造の特徴
4 一次元ファンデルワールスヘテロ構造
5 原子置換/脱カルコゲン処理によるヘテロ構造形成
6 むすび

第18章 原子打ち込みによる二次元半導体のドーピング
1 はじめに
2 電子デバイスにおけるドーピング
3 二次元半導体への置換ドーピング
4 ドープTMDの構造評価
5 ドープTMDのデバイス特性
6 まとめ

第19章 化学ドーピング等による遷移金属ダイカルコゲナイドの物性制御とデバイス応用
1 はじめに
2 TMDの化学ドーピング
3 WSe2への分子ドーピング
4 TMDと有機無機ペロブスカイトのヘテロ構造
5 まとめと今後の展開

第20章 遷移金属ダイカルコゲナイドナノチューブの構造制御および組成制御
1 はじめに
2 TMDNTの形成と電子構造
3 TMDNTの合成と構造制御の現状
4 TMDNTの構造制御:分離精製と合成
5 TMDCNTの組成制御:合成
6 TMDCNTの形成機構
7 おわりに

【第3編:応用】

第21章 電界効果型トランジスタ
1 はじめに
2 トランジスタ構造の変遷と二次元材料への期待
3 TMDCの極微細FET応用へ向けた最新研究動向
4 層状物質を用いたコンタクト技術
5 今後の課題と展望

第22章 トンネル電界効果型トランジスタ
1 はじめに
2 Si系をベースとした低消費電力デバイスの現状
3 2次元系の特徴:2D/2D電気的不活性界面
4 2D-トンネルFET
5 TFETの現状と将来展望

第23章 層間トンネル電流の解析
1 はじめに
2 層間バンド内トンネル
3 層間バンド間トンネル
4 強束縛近似に基づく解析

第24章 強誘電体の設計
1 序論
2 強誘電性の設計:理論的背景
3 強誘電性の検出
 3.1 グラフェンを用いた電気的検出
 3.2 実空間観測
 3.3 電気伝導測定・光学測定
4 モアレ強誘電性
5 まとめと今後の展望

第25章 遷移金属ダイカルコゲナイドのスピントロニクス機能
1 はじめに
2 スピントロニクスとは〜スピン流を中心に〜
3 TMDにおけるスピントロニクス機能とその計測
4 まとめ

第26章 電気二重層トランジスタと熱電デバイス
1 はじめに
2 熱電変換効果(ゼーベック効果)の基礎
3 電気二重層トランジスタ(EDLT)
4 グラフェンを用いた熱電デバイス
5 TMDC単層膜を用いた熱電デバイス
6 まとめ

第27章 発光デバイス
1 はじめに
2 遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDCs)の光機能
3 TMDCsを用いた発光デバイス
 3.1 単層TMDC発光デバイス
 3.2 ヘテロ構造発光デバイス
4 TMDC発光デバイスの新機能
 4.1 円偏光発光デバイス
 4.2 波長可変発光デバイス
5 TMDC発光デバイスの今後の展望
6 まとめ

第28章 数層遷移金属ダイカルコゲナイドの高透明太陽電池応用
1 研究の背景
2 半透明TMD太陽電池開発
3 高透明TMD太陽電池開発
4 まとめと今後の展望

第29章 バルク光起電力効果
1 はじめに
2 従来の光起電力効果の原理と限界
3 バルク光起電力効果(BPVE)と対称性
4 遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)の対称性
5 TMDの対称性の違いがBPVEに与える影響
6 BPVEの微視的メカニズム
7 二次元物質を用いたBPVE研究の可能性

第30章 二次元材料表面を運動する液滴による発電現象
1 はじめに
2 大面積・単層MoS2発電デバイスの作製と評価
3 発電機構と起電力
4 MoS2発電デバイスの応用
5 まとめと今後の展望

第31章 遷移金属ダイカルコゲナイドの触媒としての活用
1 はじめに
2 遷移金属ダイカルコゲナイド材料による水素発生反応
 2.1 水素発生反応の素反応
 2.2 水素吸着自由エネルギー
 2.3 遷移金属ダイカルコゲナイドナノシート
 2.4 歪みと硫黄空孔の導入
 2.5 ドーピング
3 他の遷移金属カルコゲナイド材料
 3.1 ヘテロジャンクション
 3.2 ヤヌスナノシート
 3.3 モアレ超格子
4 計測技術
 4.1 走査型トンネル顕微鏡
 4.2 走査型電気化学セル顕微鏡

第32章 化学処理と発光増強
1 はじめに
2 単層TMDC群の発光増強
 2.1 電子濃度の変調による発光増強
 2.2 化学結合を伴う表面処理による発光増強
 2.3 超酸処理による発光増強
 2.4 そのほかの化学的手法による発光増強
3 まとめと展望

第33章 自己組織化膜形成
1 まえがき
2 層状物質表面におけるペプチドの自己組織化
2.1 固体吸着ペプチド
2.2 各種の層状物質上で規則正しい構造に自己組織化するペプチド
2.3 ペプチドの表面分子認識
3 二硫化モリブデン(MoS2)のバイオセンサ応用に向けた表面修飾
4 まとめと今後の展望

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