日本では機能性表示に関わる制度として1991年に特定保健用食品制度が世界に先駆けて施行され、2001年には栄養機能食品制度が施行、そして最近のトピックとして、2015年4月1日から、事業者が責任を持って行う自主的な機能性表示を可能とした新しい制度がスタートした。ほぼ2年経過した2017年3月24日現在で800品目以上が届出・受理され、品目、機能性が拡大している。農林水産物(生鮮食品)や低次加工食品の機能性表示も認められ、地域特産物の機能性関与成分や事業者独自食品素材の探索などが盛んに行われるようになった。新たな機能性関与成分や機能性食品探索のためには、利用する機能性評価法の選択が将来の商品化を左右する。このような状況を踏まえ、今後さらに重要度を増す機能性食品開発のための初期評価試験プロトコールをまとめることとした。
目次
【第Ⅰ編 試料調製】
第1章 抽出
1 概論 ~抽出法一般と抽出前操作(縮分・均質化など)~
2 圧搾法
3 水抽出法
4 アルコール抽出法
5 酵素処理抽出法
6 超臨界流体抽出
第2章 ろ過
第3章 濃縮・乾燥
1 エバポレーター濃縮
2 減圧濃縮遠心
3 凍結乾燥
【第Ⅱ編 機能性評価】
第1章 整腸作用
1 マウスを用いた腸内フローラ測定
2 マウスを用いた便秘改善試験
第2章 血圧降下作用
1 in vitro ACE 阻害活性試験
2 ex vivo ACE 阻害活性試験
3 in vivo ACE 阻害活性試験
4 ラット血圧測定試験
第3章 血糖値低下作用
1 α-グルコシダーゼ活性阻害試験
2 SGLT1高発現CHO細胞を用いたグルコース吸収抑制試験
2.1 2-DG を用いた酵素法
2.2 放射性同位体を用いた活性測定法
3 マウスを用いた耐糖能評価〈経口ブドウ糖負荷試験(Oral Glucose Tolerance Test:OGTT)〉
4 マウスを用いたインスリン抵抗性評価〈インスリン負荷試験(Insulin Tolerance Test:ITT)〉
第4章 体脂肪低減作用
1 3T3-L1細胞脂肪蓄積抑制
2 実験動物を用いた体脂肪蓄積抑制試験
第5章 中性脂肪・コレステロール低減作用
1 リパーゼ活性阻害評価
2 胆汁酸吸着評価試験
3 HepG2細胞を用いた脂肪蓄積評価
4 ラットを用いた血中中性脂肪/コレステロール上昇抑制試験
第6章 食欲抑制作用
1 STC-1細胞を用いたCCK分泌試験
2 GLUTag細胞を用いたGLP-1分泌試験
3 ラットを用いた食欲抑制試験
第7章 非う蝕・抗う蝕作用
1 酸発酵性試験
2 非水溶性グルカン合成試験
第8章 骨強化作用
1 骨芽細胞培養系における骨形成促進試験
2 マウスマクロファージ様細胞RAW264.7培養系による破骨細胞形成試験
3 閉経後骨粗鬆症モデルマウスにおける骨量減少を利用したスクリーニング試験
第9章 関節機能維持・改善作用
1 軟骨細胞株ATDC5を用いた関節軟骨維持成分および骨成長・修復成分のスクリーニング系
第10章 骨格筋萎縮抑制作用
1 マウス横紋筋由来C2C12細胞を用いたタンパク質の合成と分解の評価
2 老化促進マウスを用いたサルコペニアの評価
第11章 脳機能改善作用
1 老化促進マウスSAMP8による記憶学習試験(モリス水迷路試験)
2 老化促進マウスSAMP8の脳における神経栄養因子(NGF, BDNF, NT-3)発現解析
3 アルツハイマー病モデルマウスにおけるアミロイドβ沈着抑制評価
第12章 抗炎症・抗アレルギー作用
1 RBL-2H3細胞脱顆粒抑制試験
2 RAW264.7細胞NO産生誘導・抑制試験
3 抗原性試験によるアレルギー反応軽減食品の検索
4 関節炎モデルマウスにおける炎症抑制評価
第13章 皮膚機能改善作用
1 保湿能・バリア機能・皮膚粘弾性計測
第14章 抗ストレス作用
1 単独隔離ストレス負荷試験(動物試験)
2 培養細胞を用いた抗ストレス作用評価試験Ⅰ(受容体競合試験)
3 培養細胞を用いた抗ストレス作用評価試験Ⅱ(シグナル伝達・遺伝子発現・浸潤試験)
【第Ⅲ編 成分単離・同定, 作用機序解析】
第1章 成分単離・同定
1 タンパク質
2 ペプチド
3 脂肪酸
4 多糖類
5 ポリフェノール・カロテノイド
5.1 総ポリフェノール量の分析
5.2 柑橘類に含まれるカロテノイドの分析
5.3 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いたフラボノイドの分析
6 プロバイオティクス
6.1 プロバイオティクス乳酸菌の単離と同定法
6.2 ビフィズス菌の単離と同定
第2章 作用機序解析
1 トランスクリプトーム解析
1.1 DNAマイクロアレイ
1.2 RT-PCR
1.3 RNA-seq
2 プロテオーム解析
2.1 二次元電気泳動
2.2 SRM/MRMによるタンパク質定量
3 メタボローム解析
3.1 メタボロミクスの概要
3.2 GC/MSを用いたメタボロミクスの食品研究への応用
3.3 CE-MS
3.4 FT-NMR(NMR-MP)
3.5 LC-MS
3.6 UV-VIS/NIR/蛍光-迅速分光分析法
【第Ⅳ編 安全性評価】
第1章 安全性評価の考え方
第2章 機能性関与成分の安全性の評価について